人間には感染しないとされた鳥インフルエンザが、人間に感染して大騒ぎになったのが、1997年の香港でのことだった。5月に高病原性の「H5N1型」ウイルスが3歳の男の子に感染して死亡したのをはじめ、この年の香港で18人が感染して5人が死亡している。
以降、アジアを中心に世界各地で800人以上の感染が報告され、そのうち半数以上が死亡している。しかも、それまでの新型インフルエンザは「弱毒型」とされたが、こちらは「強毒型」とされ、この強毒型ウイルスは呼吸器感染にとどまらず、血流中にウイルスが侵入して全身感染を起こす。
ヒトでも肺以外に、脳、心臓、腎臓などで感染が広がっていることが報告されている。これが新型に変異するのではないかと危惧されるところだ。
これもちょうど10年の周期にさしかかっていた時期でもあった。そこで香港の保健当局は徹底して封じ込めるために、とにかく鶏を殺処分して土中に埋める対策をとった。これがWHOからも高く評価されるところとなり、日本国内で鳥インフルエンザが確認されると、自衛隊も動員されて同じ措置をとっている。テレビ報道などで見る、あの光景だ。
新型はブタからもやってくる
新型インフルエンザの発生は2009年を最後に、すでに次の周期に入っている。2009年はブタ由来のウイルスだった。新型インフルエンザは、ブタからもやって来る。
新型インフルエンザの変異には、大きく3つの経路があるとされる。
1つは、鳥インフルエンザが鳥の中で蓄積され、ヒトへの感染力を持つように変異すること。もう1つは、前出のように鳥インフルエンザウイルスが感染したヒトの体内で変異する、もしくは、そこに既存のヒトインフルエンザが混じり合い、新型となる。このとき、互いのウイルスの遺伝子が交じり合うことを「再集合」という。
この「再集合」がブタの中でも起こる。鳥インフルエンザは、本来はヒトへうつらない。だが、ブタには感染する。さらにブタはヒトのインフルエンザウイルスにも感染する。ブタの体内でそれぞれが変異する、もしくは両方の遺伝子が混じり合い、ヒトへの感染力をもった強毒性のインフルエンザウイルスが誕生する3つ目のパターンが考えられている。
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