コロナ後「移動の自由」取り戻す為に必要なこと

必要なのは的確なリスク評価と迅速果断な政策

世界中で多くの人々が国境の中に閉じ込められている(写真:Lewis Tse Pui Lung/PIXTA)
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

コロナに奪われた「移動の自由」

新型コロナウイルスは急速に、そして静かに世界に広がった。厄介なのは、感染者がまったく意識しないまま感染が拡大してしまうことである。人から人への感染のうち約45%は、症状が出る前の感染者からほかの人への感染である。感染性は発症2日前から強くなる。つまり、本人が咳や発熱などの症状に気づいたときには、ほかの人にすでに感染させている可能性がある。

この連載一覧はこちら

この見えない敵に対して、世界は人の「移動の自由」を制限することで対峙してきた。指導者たちは、国内ではロックダウンや緊急事態宣言、国境では入国拒否や水際対策という、人の移動を強力に制限する措置を実施した。

ただし、人の移動を制限する意思と権限と執行について、各国政府はまったく異なるアプローチで臨んできた。

中国は当初、感染の実態をすすんで公開せず、その間に多くの人々が国境を越えて往来した。しかし武漢を封鎖してからは一転、きわめて厳格な措置をとり、「移動の自由」などお構いなしに封じ込めに邁進し、テクノロジーを総動員し、その強烈な執行力を世界中に見せつけた。皮肉にも、中国は世界でいち早くコロナから「移動の自由」を取り戻した国になった。

人権を尊重し、「移動の自由」を保障することを是とする欧州諸国も、感染症危機に際し、ロックダウンを敢行し国境管理を厳格化した。

日本は昨年4月に緊急事態宣言を発出し、強制力の伴わない行動自粛要請(ソフトロックダウン)で感染拡大を抑制した。日本政府の対応を検証した「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(コロナ民間臨調)の報告書では、当事者が緊急事態宣言や入国拒否を「伝家の宝刀」にたとえている。「移動の自由」の制限は、重い決断であった。

経済再生のためGoToキャンペーン事業を官房長官のときから推進してきた菅首相も、ついに1月7日、2度目の緊急事態宣言の発出を余儀なくされた。

次ページ国境を越えた際は14日間の隔離が必要になる
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ドラの視点
  • 実践!伝わる英語トレーニング
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 買わない生活
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
ストロング系チューハイの光と影
ストロング系チューハイの光と影
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
「未来を知る」ための読書案内<br>ベストブック2021

先を見通せない日々が続きますが、本を開けばアフターコロナ時代のヒントがあふれています。本特集では、有識者や経営者、書店員らが推薦した200冊を掲載。推薦数の多い順にランキングしました。あなたにとっての珠玉の1冊を探してみてください。

東洋経済education×ICT