国境管理で2つ目に重要なのは、検疫と感染流入のサーベイランス(監視)の強化である。
変異株対応においては、外国人のみならず、日本人を含むすべての帰国者・入国者に対する検疫が強化された。国籍を問わず入国者は変異ウイルスを持ち込むリスクがあるからだ。検査証明に加えて検疫で検査し、入国後は14日間待機も求める。ここでも日本は昨年の教訓を活かした。
コロナ民間臨調の報告書は、日本が、武漢からの感染流入を早期に検出できていたことを明らかにした。東京オリンピック開催により訪日外国人が急増することを見越して、未知の深刻な感染症が発生した際はすぐ検出できるよう2019年から「疑似症サーベイランス」を準備していた。武漢で確認された肺炎に似た症状の患者が発生したら、感染研が検査する体制ができていた。
日本は台湾よりも早く初症例を検出していた
この準備は見事に機能し、2020年1月15日、感染研は、中国以外ではタイに次いで世界で2例目となるCOVID-19の国内初症例を検出した。日本在住の中国人男性は、一時滞在していた武漢から帰国し発症した。すでに治りかけの段階にあったためPCR検査に必要な検体中のウイルス量が少なく、初回検査では陰性だった。しかし武漢からの帰国者であり、発熱しており肺炎になっていたことから感染研は追加検査し、かろうじて陽性を検出した。
台湾が初症例を検出したのは1月21日で、日本はこれよりも早かった。ニューヨークが初症例を3月まで検出できなかったことを考えれば、日本のサーベイランス体制は高く評価できる。
日本の検疫は、当初はPCR検査能力が限られていたが、抗原定量検査を導入し検査体制を大幅に強化していた。変異株に対して、日本は12月23日にイギリスからの入国者への検疫を強化した。12月25日には検疫で陽性となった5名から変異株を検出できた。
そして、国境管理で第3に重要なのは、入国後待機のモニタリングである。
帰国者は、みずから確保した都内のホテルや自宅で14日間「待機」するケースが多くなっていた。しかし検疫の検査では陰性だったが実は発症前で捕捉できず、その後、待機期間中の会食で2次感染を起こしてしまうケースも出てきた。変異株の流入を食い止めるため、政府は、検疫所が確保する宿泊施設での待機を求めることにした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら