閉じてしまった国境が開くには、時間がかかりそうである。『OECD国際移民アウトルック2020年版』によると、OECD諸国の厳格な国境管理によって、移民の流れは大きく変化した。OECD諸国ではオンラインの国際会議、テレワーク、Eコマースが当たり前になったことで、国際的な人の移動は激減し、今後も続く見込みである。人々は職場や交流の場を「密」な都会からサイバー空間に移しつつある。
それでもなお、経済社会活動を復活させるためには、感染拡大を抑制し、人類がコロナから「移動の自由」を取り戻すことが不可欠である。移動の制限のみならず、マスク着用の徹底、3密の回避など有効な感染対策の継続が求められる。ワクチン接種も、安全性を確認したうえで、迅速に進めていく必要がある。
地経学の時代の国境管理、3つの対策
国境が再確認された現在、国際的な人の「移動の自由」を取り戻せるかどうかが、地経学的に重要になっている。国境管理については各国でベストプラクティスや教訓が蓄積されてきた。いまこそ世界が学んできた知見を共有し、実践するときである。
国境管理において必要なことは、出入国制限、検疫とサーベイランス強化、入国後待機のモニタリングという3つの対策について、できるだけ的確な情勢分析とリスク評価にもとづき、果断に意思決定し、機動的に施策を執行していくことである。
国境管理でまず重要なのは、出入国制限、すなわち入国拒否と渡航中止勧告、査証の制限等の措置である。
出入国制限は、感染症危機における国境管理として本来、禁じ手であった。しかし見えないコロナの流入を抑制するため、日本は昨年1月末に中国・湖北省からの渡航者の上陸拒否に踏み切った。中国からの流入は2月上旬には収束し、空港検疫を除くと、輸入例のうち11例にとどまった。
しかしその後、欧州、エジプト、東南アジアからの輸入例が激増し、3月末時点で200例近くにのぼっていた。欧州との間の渡航禁止や入国拒否の遅れにより、日本は国内流行を許してしまった。
日本はこのときの教訓を活かし、変異株に対して迅速に応じた。変異株がイギリスに続き南アフリカ等で次々と検出されたことから、昨年末にはすべての国・地域からの外国人の新規入国を一時停止した。日本に比べれば感染が抑制されていた東アジアの国々との間で短期出張者の入国を例外的に緩和するビジネストラックも、一時停止した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら