「麻雀小説家も神と祀られる」神社の意外な実態 新しい神が生まれる可能性はつねにある

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兵庫県神戸市にある湊川(みなとがわ)神社になると、主たる祭神は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将、楠木正成である。正成は、南朝の忠臣とされ、幕末から明治時代にかけて高く評価された。湊川神社は、忠臣正成を祀るために明治5年(1872年)に創建された。

明治時代に入ってからは、こうした忠臣や戦没者が神として祀られることが活発化した。明治2年(1869年)に東京招魂社として創建された靖国神社の祭神も戦没者であり、もともとは人である。人を神として祀ることができるということは、これからも新しい神が生み出されていく可能性があるということである。

靖国神社の場合だと、戦後、戦没者であることが明らかになった軍人や軍属が次々と現れたことで、一時、祭神の数は毎年のように増えていった。それによって、246万6千余柱もの祭神が祀られるようになったのである。

最も新しい神は小説家の阿佐田哲也

私が知る限り、最も新しく神として祀られた人物は、小説家であった色川武大である。色川は、阿佐田哲也というペンネームで麻雀小説を書いていたことで知られており、「阿佐田哲也大神」という形で祀られている。

祀られているのは、伏見稲荷大社の稲荷山においてである。神として祀ったのは、新日本麻雀連盟の南本喜三理事長だった。命日は4月10日だが、それに近い4月の第1日曜日に例祭が行われている。

宗教法人となるには、文部科学省の認証を必要とする。だが、神を祀ることに特別な許可は要らない。祀ろうとする人間がいて、それを実行に移せば、新しい神が誕生する。おそらく、阿佐田哲也大神以降も、新たに神を祀ることが行われているはずだ。その可能性はつねに開かれている。

神は目に見えない存在である。通常、神社では、神殿のなかに祀られている。神殿は通常、本殿と拝殿に分かれている。手前にあるのが拝殿で、奥に本殿がある。拝殿の前には賽銭箱が置かれ、参拝者はそこで参拝する。

神社では「正式参拝」が可能で、その際には拝殿に登ることができる。だが通常、本殿の中にまで入ることはできない。それも、本殿には「神体」という神聖な存在が祀られているからである。神体は礼拝の対象ということになるが、そこに神の霊が宿ると考えられている。

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