元ヤフトピ編集長が語る「勝つメディアの条件」 「いいものを書けば売れる」は昔から幻想

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2009年に都内の大学で教えていたとき、学生が提出してきたレポートでは、ニュースに期待する役割として、「報道すべきものをきちんとニュースにする」「読者や視聴者がわからないことを解説する」といったものが多数挙げられていました。

次の10年もニュースメディアの役割と期待はさほど変わっていないでしょう。ただ、メディア運営をするに当たり、ビジネスモデルを変えていくことが課題です。「いいものを書けば、売れる」は昔から幻想です。昔は、新聞くらいしか時事を知る手段がなかったから、新聞が売れたのです。

「いいもの」とは書いている人たちがそう思っていただけで、読者が求めている「いいもの」とは別なのです。インターネットの定期購読(サブスクリプション)モデルやコンテンツの課金モデルでは、読者が求める「いいもの」を提供しなければ売れません。

新たなニュースメディアがネットに登場しても、ヤフーニュースがそうだったように、過去20年以上、メディアのビジネスモデルは広告収入に依拠してきました。「読まれるか、読まれないか」で一喜一憂することは、それが「いい記事」かどうかを示す指標にはならず、広告費に換算すると、いったい、いくらになるか、という話にしかすぎません。

本来の目的は「読者にコンテンツを売る」こと

本来、ニュースコンテンツは読者に提供されるものです。それなのに、広告モデルでPVを重視してきたばかりに、記事作成の矢印が無意識のうちに広告主へ向いている。読まれる記事を書いて注目され、集まってくる注目を広告主に売っているだけです。

ニュースメディアの仕事とは本来、広告主に注目を売ることが目的ではなく、読者にコンテンツを売ることが目的です。広告に飼い慣らされていては、ニュースメディアの先行きは明るくないでしょう。

定期購読や課金ビジネスは、コンテンツを読者に気に入ってもらわないと成立しない。自分の書いた記事が買ってもらえるか、否か。つまり、読者ニーズに応えたニュースなのかどうか。それを意識して日々活動するニュースメディアこそが、結局は社会的な勝者になるのではないでしょうか。

奥村 倫弘 東京都市大学メディア情報学部教授

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おくむら みちひろ / Michihiro Okumura

1969年大阪府生まれ。同志社大学卒。1992年読売新聞大阪本社入社。1998年にヤフーに移り、ヤフー・ニュースの立ち上げ人としてプロジェクトに携わったほか、ヤフー・トピックス編集長、メディアサービスカンパニー編集本部長を務めた。その後、ウェブメディア「THE PAGE」の編集長を経て、2019年4月から現職。フロントラインプレス(Frontline Press)所属

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