元ヤフトピ編集長が語る「勝つメディアの条件」 「いいものを書けば売れる」は昔から幻想

Yahoo!ニュースの立ち上げに携わった奥村倫弘氏が予想するメディアの未来とは(写真:板垣聡旨)
アップルのiPhoneが日本で発売され、スマートフォン時代が本格的に到来してから10年あまり経ちます。その間にニュースの舞台はアナログからデジタルへ移行し、2021年も新たな動きが出てきそうです。これからニュースメディアはどうなっていくのでしょうか。元読売新聞記者で、ヤフージャパン時代には「Yahoo!ニュース(以下、ヤフーニュース)」の立ち上げに携わり、ヤフー・トピックス編集長として、ヤフーニュースを日本最大級のニュースサイトに育てた経験を持つ、東京都市大学メディア情報学部教授の奥村倫弘氏が解説します。
読売新聞がスマホアプリを出した狙い
「2020年、ニュースメディアにどんな注目すべき動きがあったのか」と問われると、劇的な動きはありませんでした。何かが新しく動き始めたというのも特に思いつきません。他方で、テレビや新聞といった「伝統メディア」が、少しずつ動き始めた印象です。
新聞業界で注目したのは読売新聞です。2020年7月にスマートフォン用アプリ「読売新聞オンライン」を公開しました。面白いのは、先行してアプリ展開をしている日本経済新聞や朝日新聞とは異なり、自宅などで紙を定期購読していないと、読売アプリでデジタルコンテンツの全文が読めない点です。
日経や朝日などは「紙は1つのオプション。新聞のデジタル展開に紙は要らない。双方を必ずしもセットにする必要はない」という戦略ですが、その常識を覆したのではないでしょうか。
読売新聞の紙の購読者は推定約700万人。紙を取っている人がアプリをダウンロードしていけば、それだけでアプリのインストール数が一定数取れる。新しく顧客を開拓するのではなく、逆に、これまでの読者にアプリをインストールさせればいいという戦略ではないか、と思います。
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