元ヤフトピ編集長が語る「勝つメディアの条件」 「いいものを書けば売れる」は昔から幻想

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私の周囲を見ても、自宅にスマートスピーカーがある人が増えているし、スマートフォンで音声検索をするユーザーも増えている印象です。一気に増えるのではなく、徐々に増えていく。その流れは今後も進むでしょう。

音声コンテンツは「ながら視聴」ができる。文章のように文字を目で追いかけて読むのではなく、他のことをしながら情報を取り入れることができます。この点でも音声ニュースに需要が出てきてもおかしくありません。ラジオ大国という事情もあるでしょうが、実際、アメリカでは音声アプリで報道を聞く人が増えていて、新聞社などもそこに力を入れています。

ネットに転がる、信憑性が不確かな記事に、読者が疑問を抱き始めています。それは間違いないでしょう。今、日本だけではなく世界的に、信頼できる高品質な情報に対して、お金をかけるムーブメントは来ていると思います。伸び率は急激ではないものの、日本経済新聞や朝日新聞の有料会員数が増加を続けているのも、この流れの中にあると思います。

そもそもコンテンツにお金を払うという習慣ができ始めています。NetflixやSpotify、電子コミックにお金を払っている人もかなりいます。昔は海賊版でした。

ハードニュースだけを読もうとする人はいない

デバイスが多様化しているので、人々がニュースに接触する機会も増えていく可能性は大いにあります。ただ難しい政治問題などを扱う「ハードニュース」だけを読もうとする人は多くいません。これは昔から同じです。

紙の新聞にもテレビ欄があって、4コマ漫画があって、そこからなんとなく社会面を見て、時事問題を知る。そんなパターンでした。

テレビも同じ。バラエティー番組と報道番組が交互に編成されています。バラエティーなど自分の趣味の番組を見終わると、いつの間にかニュース番組を見ていたという経験があるでしょう。インターネットも同じです。硬いニュースと柔らかいニュースを交ぜて見てもらう工夫が必要です。

コロナの関係もあり、2020年はニュースの需要も高まりました。生活様式が大きく変化したことで、人とニュースが接触する状況も一段と多様化しています。自宅でリモートワークをしている人はスマートスピーカーに触れる機会が高まることで、そのスピーカーからニュースを聞き流す習慣がつくでしょう。

ただし、ニュースへの接触スタイルが変わっても、ニュースへの期待は変わりません。ここでいうニュースとは、「調査報道」や「権力の監視」といった活動を指しています。

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