日本人は年功序列の弊害の重さをわかってない IT化の遅れは社会組織の構造にも起因している
日本では、いったん雇用した労働者を容易に解雇できません。そのため、中途採用者の雇用市場が発達せず、さらに解雇が困難になります。
とくに、高学歴者が組織間を動かないことが大きな問題です。なかでも、経営者の労働市場は、存在しないに等しい状態です。これがもたらす問題については、後述します。 また、年功序列賃金体系も変わりません。高賃金者の賃金は年齢が上がるほど上がります。
IT化に対応できない1940年体制型組織
ITとは、情報技術を一般的に指す概念ではなく、1980年代以降に支配的となった情報技術のことです。
その中核は、PCとインターネットです。それまでメインフレームと専用回線によって行なっていたことを、より小さなコンピュータとネットワークによって行なえるようになったのです。そして、1990年代から、インターネットの活用が始まりました。
大型コンピュータの場合には、組織を超えたデジタル情報の交換には、高価なデータ回線を使わなければならなかったため、それほど頻繁には行なわれませんでした。組織ごとに閉じた仕組みの中でのデータ処理が中心だったのです。
しかし、ITでは、インターネットによって組織を超えたデータ交換が極めて容易に行えるようになりました。非常に低いコストで地球規模でのデータ交換が可能になったのです。組織の枠を超えた情報のやりとりが重要な意味を持つようになりました。
このような大きな技術革新が、経済活動を大きく変え、1990年代以降の世界を一変させました。ITがもたらした巨大な変化は、産業革命のそれに匹敵します。産業革命のときと同じような変化が、情報処理に関して生じたのです(そして、現在も進行中です)。したがって、この変化を「革命」と呼ぶのは、まったく適切なことです。
ところが、日本の組織は閉鎖的な仕組みであるために、これにうまく対応することができなかったのです。
いま日本が直面しているのは、デジタル化の遅れであると言われます。DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉がよく使われますが、それは、「アナログを脱してデジタル処理を行う、それによってビジネスの形態を変えていく」という意味で用いられています。
しかし、これまで述べたことから明らかなように、デジタル化自体は、すでに1970年代から行われていたことです。問題は、デジタル化の中身が、中央集権的なものから分散的でオープンな仕組みに転換したこと、そして、その変化に日本が対応できていないことなのです。
そして、その根底に、これまで述べてきた日本型組織の問題が横たわっています。新しい情報通信技術が、日本の経済社会構造、とくに大組織のそれと不適合なのです。
こう考えると、「レガシー」は、大型コンピュータだけではないことが分かります。
日本型組織が、深刻なレガシーなのです。これは、きわめて根が深い問題です。
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