日本人は年功序列の弊害の重さをわかってない IT化の遅れは社会組織の構造にも起因している
日本型組織は、新しい技術の導入に対してネガティブな効果をもたらしています。
日本の組織における賃金序列は、職務上の序列を反映しています。入社直後の20~24歳では、賃金にほとんど差がありません。30歳をすぎるころから選別の結果が賃金に反映されるようになり、高賃金者の賃金が高い伸び率で上昇していきます。それは50歳ごろで頭打ちになります。
他方、60歳代になると、高賃金者以外の者の賃金が下落します。65歳になると、高賃金者の賃金がもう一段上がります。これは、経営幹部への昇進を反映するものでしょう。
これは、幹部候補生について、徐々に選別が行われていく状況を示しています。つまり、入社後、年齢の経過とともに組織の序列を上がり、権限も増大してゆく。そして、勝ち残った者が、組織の方向づけに影響を与える経営者となるのです。これは、組織の柔軟性という観点から見て、大きな問題です。さらに組織間の流動性が極端に低いのです。
こうした条件下では、専門家が生まれず、ジェネラリストが優越します。経営者について、特にそれが顕著です。組織のトップは、その組織についての専門家であり、どこでも通用する専門家ではありません。
そもそも日本では、経営が専門的職業だという認識すらありません。日本企業のトップ
にいるのは、組織の階段を上り詰めた人であり、組織を掌握できると評価された人々なの
です。
経営者がデジタル化を理解していない
こうした体制は、技術や条件が安定的ならさして大きな問題ではありません。しかし、変化に対応できないのが問題です。変化に対応するには、専門家や経営者が組織間を移動し、経営者が方向をリードする必要があります。
リーダーの資質は大変重要です。とくに、新しい技術体系がいかなる特性をもっているのかを正しく理解することが重要です。しかし、日本では、デジタル化について理解がある経営者が少ないのです。
本来であれば、デジタル化に関する知識は、専門家としての経営者にとって必須の知識のはずです。しかし、日本では、必ずしも必要なこととは考えられていません。
例えば、経団連の会長室には、中西宏明会長の前まではPCが置かれていなかったといいます。つまり、それまでの経団連会長は、PCなどは使わなかった人たちだったのです。こうした状況でリーダーが組織のデジタル化を指導できるはずはありません。
ITのシステムについて専門的知識を持っていないので、ベンダーに丸投げになります。新しいシステムを入れるのでなく、従来のシステムを維持し続けます。日本でレガシーシステムが残ってしまう大きな原因がここにあります。
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