なぜ負の連鎖を途中で断ち切れなかったか
見たこともないような極端なシステムによって、日本は混乱に陥る。特にサイドにいる敵を捕まえるのが難しくなり、それによって日本の選手たちの立ち位置もバラバラになってしまった。縦にも横にも引き延ばされてしまったのだ。そして、サイドにボールを運ばれて、日本はわずか2分間に2失点を喫してしまう。「プレスが効かない」ことから始まった負の連鎖は、最後まで断ち切ることができなかった。
それにしても、なぜ日本は負の連鎖を途中で止めることができなかったのだろう。もし抜け出せていたら、日本の攻撃陣の質を考えれば、十分に追いつくことが可能だったはずだ。
ここで冒頭の「ひとつの戦い方に依存している」というテーマが関係してくる。
ザックジャパンはこの4年間、プレスの練習に継続して取り組み、いい守備ができたときに、高いパフォーマンスを発揮してきた。高い位置でボールを奪えると、縦に速い攻撃をできるからだ。だが、言い換えれば、いい守備ができないと、パフォーマンスが著しく落ちるということでもある。
その一方で、本田や遠藤保仁は自らの技術力と発想力を生かすために、緻密なパス回しによる崩しに取り組んできた。前者は監督主導で、後者は選手主導。双方の意見がぶつかったこともあったが、互いに歩み寄り、最適のバランスがあると信じて模索し続けてきた。
だが、それを完成させるには時間が足りなかった。緻密なパス回しは発展途上のまま大会を迎えてしまう。唯一の拠り所は、監督主導の「いい守備からのいい攻撃」だけだ。コートジボワール戦ではそれが失われてしまうと、もはや苦しいときに立ち戻る場所がなくなり、何をしていいかわからなくなってしまった。偶然の負けではなく、必然の負けと言えた。
絶対的エースの“創造的破壊”に期待
日本はグループリーグを突破するために、ここから2連勝するしかない。6月19日(日本時間6月20日午前7時)のギリシャ戦に向けて、何をすべきだろう?
監督のことを信じることも重要だが、個人的にはあらためて選手主導の緻密なパス回しに挑戦すべきだと考えている。本田とザックが歩み寄ったことで、緻密さが中途半端になってしまったと感じるからだ。残された時間は本当にわずかだが、香川や大久保嘉人の技術を生かし、そこに岡崎慎司の理論を超越した飛び出しを掛け合わせれば、十分に戦える武器に仕上げられるはずだ。
その音頭を取れるのは本田しかいない。もはや衝突を避けている場合ではない。この絶対的エースの創造的破壊に、最後の望みを託したい。
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