コロナワクチンで遅れる日本に求められる知恵

公的「投資案件」としてとらえる必要あり

安全保障としてのワクチンを考えていく必要がある(写真:Bill Oxford/iStock)
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

日本のワクチン研究・製造は後れを取っている

2020年1月に始まったわが国の新型コロナウイルス感染症の流行は、春の第1波、夏の第2波に続き、11月以降、第3波がその勢いを増しており、政府が「勝負の3週間」として感染予防を呼びかけたにもかかわらず、全国における1日の発生数が8000名に迫り,緊急事態が再度宣言された。

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こうした中、本年にオリンピックを控えるわが国にとって、感染を抑制していくためにワクチン接種によって集団免疫を獲得することが必須だが、英米に比較して接種開始も遅れているほか、国内の研究開発が大きく後れを取っていることなど、ワクチンの研究開発や製造をめぐる産業政策に疑問が呈されている。

とくに、「タイムリーに自国でワクチンを研究開発し、製造する能力の不足」が指摘される。今回は、たまたま欧米の製造国における生産量に余裕があったために、真摯な交渉の結果、緊急で日本に輸入することができる見込みだ。ただ、そうでなければ、いずれの国もまずは自国民接種優先のはずで、数が足りなければ輸出ができず、ワクチンが日本には回ってこない可能性もあった。今回の新型コロナ感染症の経験をよい契機として、わが国のワクチン産業政策の「これまで」を見直し、「これから」に向けて大きく舵を切る時期に来ているのではないか。

実は、昭和40年代まで日本はワクチンの研究開発や製造について先進国だった。しかし、主として接種対象である乳幼児の数が大幅に減ってしまい市場が縮小したこと、予防接種事業自体の成功と食料品から摂取できる栄養の改善により、対象とする感染症が減少。副反応だけが目立ち、できるだけリスクを回避するという世間の風潮の中で、訴訟の連発に政府もメーカーも萎縮してしまっていた。また、国内市場のみで完結していたため、審査承認を司る厚生労働省の下、「護送船団方式」といわれる、規制下の限定競争を支えてきた産業政策が取られてきたことも業界を弱体化へと導いた可能性がある。

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