世界が中国への「貿易依存」を脱するための知恵

同志国連帯や生産拠点の分散などが必要だ

中国依存がもたらす脆弱性を克服するヒントは75年前に示されていた知恵にある(写真:vchal/iStock)
コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

COVID-19が示した脆弱性

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、多くの人にサプライチェーンの脆弱性を意識させた。中国・武漢発で広がった感染は、中国から部品を輸入する日本の自動車生産にも影響を与え、中国からの輸入に頼るマスク不足も深刻となった。アメリカでも、感染が広がり、マスクや医療用の手袋、ガウンなどが不足。医薬品を含め、海外生産に頼らずに国内生産を増やすべきとの声が高まった。

この連載一覧はこちら

また、COVID-19の発生源に関して独立調査を主張したオーストラリアに対して、中国は牛肉の輸入を停止、大麦の輸入に80.5%の関税を課し、ワイン、石炭等の輸入も制限してオーストラリアを苦しめた。

ジャストインタイムのリーンな生産方式は高い効率性を実現するが、それは同時に脆弱性も内包する。2011年に起きた東日本大震災とタイの大洪水は、効率的な生産体制が持つ脆弱性を明らかにした。企業もこれを認識、2016年の国際協力銀行の調査では、57.7%の日本企業がサプライチェーンリスクを認識し、調達先の分散を図っていると回答した。また、同調査のヒアリングではリスク削減のために部品の適正在庫に努めているとの回答もあった。

こうした調達の分散や在庫積み増しは、脆弱性の克服に有効だが、結果として効率性を大きく損なえば、市場競争の中で競合他社に負けてしまう。部品の共通化や、デジタル技術を活用したサプライチェーン管理などさまざまな工夫も行いつつ、最終的には企業として「効率性」と「強靭性」の最適なバランスを見いだす必要がある。

次ページ国レベルでの視点も重要――ハーシュマンの指摘
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 西村直人の乗り物見聞録
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • インフレが日本を救う
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ホンダ「フリード」がトヨタ「シエンタ」より売れるようになった訳
ホンダ「フリード」がトヨタ「シエンタ」より売れるようになった訳
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
ソニーとパナソニック、10年で大差ついた稼ぎ方
ソニーとパナソニック、10年で大差ついた稼ぎ方
仕事が遅い人が「良いと信じている3大悪習慣」
仕事が遅い人が「良いと信じている3大悪習慣」
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
15種類の「書き方」を徹底解説<br>無敵の文章術

ビジネスパーソンを中心に文章力の必要性が高まっています。在宅勤務における情報伝達手段として、メールやチャットは不可欠に。また精度の高い企画書はビジネスの成功に直結します。本特集ではシーンや目的別に、短期間でのスキル向上を目指します。

東洋経済education×ICT