菅首相、「手遅れ感が満載」の緊急事態再宣言 解散時期は「秋のどこかで」発言ににじむ迷走

拡大
縮小

仕事始めの4日からは検査数が急増し、その結果が反映される6日以降の感染者数は、「東京は1500人、全国で5000人の大台を突破する」(同)事態も想定されている。

そうした状況下で菅首相が「最後の頼り」(側近)にしているのが、国内でのワクチン早期接種開始だ。年頭会見で菅首相はワクチン接種について、「2月下旬までには接種開始できるように、政府一体となって準備を進めている」とこの時ばかりは胸を張り、「私も率先して接種する」と記者団を見回した。

感染高止まりなら政権危機も

ただ、ワクチン接種開始には安全性の確認が大前提で、欧米では「南アフリカの変異種には効果がない」との研究結果も出始めている。しかも、先行して接種を始めたアメリカでも、接種の拡大は「当初の目論見よりはるかに遅れている」(ワクチン専門家)のが実態だ。

菅首相の思惑通り早期の接種開始にこぎつけ、それに合わせて感染者数が急減すれば、「東京五輪開催への道もひらけ、支持率回復も可能」(自民執行部)ではある。しかし、接種開始が遅れて感染者数が高止まりし、緊急事態宣言の解除が3月までずれ込めば、「支持率が20%台に落ち込んで、政権危機が深刻化する」(閣僚経験者)のは避けられない。

渦中の菅首相は5日早朝に官邸敷地内を散歩するなど、淡々と日課をこなし、同日の自民党役員会で、首都4都県を対象とする緊急事態宣言の発令を7日に決定する方針を表明した。

その表情は「もはや運を天に任せる心境」(周辺)ともみえるが、SNS上では「#菅辞めろ」などの批判がトレンド上位に並んでいる。「意志あれば道あり」という座右の銘の通り、菅首相に「迫りくる日本の危機を回避する宰相としての膂力(りょりょく)があるかどうか」(自民長老)。それが菅政権の命運を左右しそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT