菅首相、「手遅れ感が満載」の緊急事態再宣言 解散時期は「秋のどこかで」発言ににじむ迷走

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この発言に記者団は首を傾げ、政界にざわめきが広がった。しかも、会見後に官邸報道室が「『秋のどこかで』を『秋までのどこかで』に訂正させていただきます」とのペーパーを報道各社に配ったことで騒ぎは拡大した。

当の菅首相は4日夜に出演した民放番組で「『秋までのどこかで』と私、発言したと思っているんですけれども」と自ら言い間違いだったと釈明してみせた。

ただ、首相の伝家の宝刀の解散に絡む発言については、「歴代首相の誰もが全神経を集中させてきた。言い間違いなどありえない」(首相経験者)との声も多い。このため政界では「思わず本音を漏らしてしまい、慌てて言い間違いとごまかした」との見方も広がる。

野党は首相発言に集中砲火

この民放番組で菅首相は、「解散については、時期は決まっていますから」とも語ったが、この発言も「解散」ではなく、「衆院議員の任期満了」の間違いなのは明らかだ。さらに、新型コロナ対応の特措法改正に触れた中でも、「今回、特措法も緊急事態宣言も、悩み悩んだ中で、特に緊急事態宣言というのは発出させていただいた」と、検討中のはずの緊急事態宣言発出を過去形で語るというミスもあった。

番組内で菅首相は、緊急事態宣言について「悩みに悩んだ」と2020年末のGoTo全国一斉停止と同じセリフを口にした。これに対し立憲民主党の小沢一郎氏が自らのツイッターに「最悪の後手後手」と投稿し、蓮舫同党代表代行がすかさず「見事な後手」と書き込むなど、野党側は菅首相の一連の言動に集中砲火を浴びせた。

菅首相はこれまでの会見などで、「こして(こうして)」「そして(そうして)」など意味が取りにくい言い回しを多用してきた。与党内からも「語彙の少なさが表現力不足につながっている」との指摘も多く、野党側は「頭脳が混乱している証拠」(共産党)と酷評する。

2020年4~5月の緊急事態宣言は当初、首都圏の4都県と大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象だったが、その後全国に広がり、すべて解除されたのは約1カ月半後の5月25日だった。しかも、当時は宣言発出時に「感染はすでにピークを過ぎていた」(感染症専門家)が、今回は「宣言後も感染拡大が続く可能性が大きい」(同)とされ、「1カ月での宣言解除は困難」(同)との見方が多い。

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