マンション住民の困惑、ずさんな施工や修繕計画でトラブル続発
さらに調べてみると、管理会社が多額の工事を行わせようとして裏で糸を引いている疑いも浮上。計画内容を精査したところ、必要性の乏しい箇所が多いことがわかり、当面の処置として15万円で済ますことにした。また、この管理会社では未経験の高齢者に管理業務を再委託するなど、管理の質にも問題が多かったため、入札で他社に切り替えた。
現在、日本では国民の1割以上に当たる1400万人がマンションで暮らしている。そして多くの人がマンションを購入し終(つい)の住処(すみか)にしようと考えている。にもかかわらず、購入者や管理組合を保護する仕組みは脆弱だ。
宅建業法やマンション管理適正化法など、契約について定めた法律はあるものの、罰則規定が弱いため、売り手本位のセールスや管理会社の不適切な対応が依然として目立つ。
しかし、こうした姿勢が長続きしないことは確かだ。今後は、法改正による罰則強化も浮上する可能性がある。業界が売り手本位の姿勢を改めないかぎり、トラブルは後を絶たず、企業の信用も高まらないだろう。
■インタビュー/大久保和孝・新日本有限責任監査法人CSR担当パートナー
トラブルの原因は販売姿勢 経営者の真摯な対応が必要
マンション販売では、コストが適切に反映されていない「長期修繕計画案」を提示して販売している不動産会社も多い。月々の修繕積立金の所要額を、実態よりも低く見せることで、マンションを売りやすくしていると言われても仕方がない。いざ、10年後、20年後に大規模修繕工事に直面すると、住民が多額の一時金支出や修繕積立金の大幅引き上げを迫られる例は少なくない。