マンション住民の困惑、ずさんな施工や修繕計画でトラブル続発
マンションの販売会社が購入者を裁判に訴えるという前代未聞の事態が勃発している。
舞台は、東京都多摩地域の13階建て96戸のマンション。3年前に同物件を分譲したコスモスイニシア(ジャスダック→詳細)は1月6日、マンション住民が組織する管理組合を突然、裁判に訴えた。
「(管理組合が主張してきた長期修繕計画の損害賠償請求権など)2217万円の債務が存在しないことの確認を求める」
訴訟の中身は分譲上のトラブルにおける債務不存在の確認請求だが、「被告」にされた管理組合理事長の田中直也さん(仮名、48)はふんまんやる方ない。
「コスモスイニシアは、手抜き工事やずさんな長期修繕計画を作成したことへの反省もなく、瑕疵(かし)への対応を引き延ばすなど、誠意のない姿勢を2年近く取り続けてきた。その揚げ句、司法の場を使って自分たちにいっさい非がないという理不尽な主張を押し通そうとするのは、上場企業の姿勢として理解しがたい」
トラブルのもととなる手抜き工事やずさんな長期修繕計画の作成について、マンションの住民は昨年10月に国土交通省に行政指導を求める文書を送っている。そのうえで昨年11月には前原誠司国交相宛てに、詳細な経緯を記した「上申書」を送付。提訴された後の今年2月には、地域の消費生活センターにも相談している。
事態を重く見た同センターは「消費者事故情報等」として消費者庁に内容を伝達しており、「現在、二つの担当課で宅地建物取引業法(宅建業法)および景品表示法に抵触しているか否かの検討作業が始まっている」(消費者庁)。
また、マンション住民は、管理業務を委託していたコスモスライフ(4月1日に大和ライフネクストに社名変更)の親会社となった大和ハウス工業の社長以下取締役および監査役全員にも、親会社として会社法の内部統制に基づく適切な子会社管理を行うように求める文書を送っている。