マンション住民の困惑、ずさんな施工や修繕計画でトラブル続発
「分譲からわずか1年余りであちこちにシミのようなものが浮き出すのは理解しがたい」(田中理事長)と考え、当初、コスモスイニシアおよびコスモスライフに原因究明を求めた。
しかし、両社は「原因がはっきりしない」と繰り返すだけだったことから、専門のマンション管理士を通じて、一級建築士の紹介を受けた。建築士が調べたところ、予期せぬ事実が次々と判明した。
同建築士はこう説明する。
「白華現象が竣工から2年も経たずに発生したのは、外壁の防水工事がきちんと行われていなかったため。シーリングを除去し、タイルを取り去って補修を行う必要があった。防水上のもう一つの問題が、ウレタン防水がいいかげんに行われていた点だった。2ミリの厚さに塗ることが設計図書に記されていたにもかかわらず、実際は0・1~0・2ミリの厚さしかなかった。そのため、雨水の浸入を防ぐことができず、ウレタン防水のひび割れ部分の下のほうでも白華現象が始まっていた」
当初、コスモスイニシアは白華現象について、「汚れにすぎない」と住民に説明。修繕を渋り、「2年後に様子を見ませんか」と述べていたというが、最終的には「10年保障」を理由にすべて修理を受け入れた。
建築士が驚いたことはほかにもあった。廊下や階段、エレベーター設備を覆うアルミ製の手すり(前ページ写真)の取り外し費用が、コスモスイニシアが作成した長期修繕計画書から抜け落ちていたのだ。
建築士によれば、「大規模修繕では、手すりをいったん取り外さなければ、塗装ができない。そのために足場を組む必要があるほか、安全のための仮設の手すりの用意や取り外した手すりの一時的な保管も必要で、2500万円もかかることがわかった」。