SHOWROOM前田社長が放つ、「プロ」の短尺動画 視聴者はみな心の空洞を埋めようとしている

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コロナが常態化し、心の空洞に冷たい風が吹き続ける限り、TVでも経済メディアでも、「機能」より「意味」の重要性が増すと予測している。「役に立つ」ということ以上に、「心が意味を感じる」ということに、より大きな価値が置かれる。役に立つ情報が見れるというよりは、何か心が揺さぶられる、温かさを感じる、感動がそこにある、そういったものに、多くの可処分時間が割かれる。結果、ビジネスとしても、高い成長率を誇る。そんな社会のさなかにいると見ている。

最近、「プロセス・エコノミー」という言葉があるが、文字通り、みんな、心を埋めるべく、もっとプロセスに参加していくだろうし、そこがキャッシュポイントになるのではなかろうか。今までは、完成してから商品自体にお金を払う対象であったが、「完成するまでがお金を払う対象」という面白い現象が起こる。

別の角度で見れば、これはいわば、「効率のエンタメ」から、「非効率のエンタメ」へのシフトでもある、と言える。心を埋めるためには、”役に立ちしろ”、つまり役に立つための一定の余白のようなものが必要で、その意味で、逆に手間がかかるほうがよいのだ。

よく過去にも例に挙げているスナックのママなどは、”役に立ちしろ”の権化であるし、最近だと、「LOVOT」という家族型ロボットも同様に「非効率のエンタメ」を体現したような存在で、とても注目している。

AIのディープラーニングや自動運転などの最先端の技術を、「人間に愛されるため」だけに注ぎ込んだロボットだが、一度転んだら絶対起き上がれないし、嫉妬してすねるなど、わざわざ手間がかかることをやっている。普通、ロボットを作ろうと思ったら、役に立つロボットを作ってしまう世の中において、逆転の発想であり、最高に面白いと思う。

非効率のエンタメこそ、社会の室温を高める

━━出来が悪い子ほどかわいいといいます(笑)。効率や生産性の追求とは真逆の動きですね。

効率のいいロボットだと、自分はそんなにがんばらなくても、ロボットが助けてくれる。もちろん、社会のある部分においては、そうしたロボットが重大な役割を果たすことがあり、そちらの進化も楽しみだ。ただし、人の心に目を向けてみると、「何かの役に立てている」というのは、ものすごいパワーを生む。人との接点が薄まる今だからこそそれが言える。

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ロボットのお世話をすることで、誰かの役に立てているとわれわれ人間が感じる。この”役に立ちしろ”の役割をロボットに求めるようになったとは、人間が面白い方向に進化してきているなと思う。

「はい、これが完成品です」と最終アウトプットを渡すよりも、まだ未完成のときに参加してもらい、みんなに手伝ってもらいながら少しずつ成長していくプロセスエコノミーの存在意義は、過去最大に大きくなってきていいる。この混沌の時代において、われわれが想像している以上に、人の心に栄養分を与えると思う。

ロボットや商品に限った話ではなく、ビジネスのあらゆる場面において、「余白」を深く理解して上手く乗りこなせるかどうかが重要になるだろう。情報メディアも同様で、いままでのメディア、特にジャーナリズムは、余白を残した設計が決して前提とされていなかったように思う。

お金を払ってもらうのだから、プロのモノを、完璧なモノを、信頼できるモノをひとえにお届けするという世界だったかな、と想像する。それが「自分たちはここに悩んでいるけどどうしよう」という、悩みや挑戦の様子を、お客様につまびらかに開放していくと、何が起きるのだろうとワクワクする。お客様にお金を払ってもらっているのに、しかも時間を割いてもらうなんて、と思ってしまうかもしれないが、逆に、自分が参与したメディアがさらに大きく育つ感覚は、斬新で格別だと思う。「非効率のエンタメ」が社会の寂しさ、風穴を少しずつ塞いで、冷え切った社会の室温を高めてくれることを願ってやまない。

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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