SHOWROOM前田社長が放つ、「プロ」の短尺動画

視聴者はみな心の空洞を埋めようとしている

これからさらに、Youtubeやライブ配信などネット「のみ」で成功する例が多く登場するほど、「完成品を作ってお届けする」という芸能文化は変容していく。逆に未完成品が完成品に至る過程にこそ価値があるという世界。一定のプロデュースはありつつも、原則はタレントの成長過程そのものをファンのみんなに包み隠さず見ていただき応援して頂いたほうが、かえってタレントのためになる。

そういう世界線がコロナで特に音を立てて存在感を増している。2020年に大流行したNiziUはその典型だろう。みんな、結果はもとより、プロセスがみたい、自分も夢の片棒を一緒に担いでいきたい、そんな世相をコロナがより深めたのだと感じる。

プロセス開示が生むファン熱量はとにかくすさまじい。ライブ配信においても、濃い共感を呼び起こす強い演者の中には、認知度こそなくとも、月に数百万から1000万円、あるいはそれ以上の収益を超える人もいる。

そこまでやってみても課題に感じることはたくさんある。ネット世界の人気者というのは、ネクストでは偶像の世界、つまり作品の世界に行きたくなる、ということ。そのためにわれわれは何ができるのか。長い試行錯誤を経て、2つの仮説にたどりついた。

まず1つは、われわれ自身、強いメディアを持つこと。TVは予算を投じれば、たとえば1クール(3カ月間)、われわれで一定程度コントロールできる番組をつくれるかもしれないが、あくまでもスポット。その番組の影響範囲を超えてもなお、継続的に当該演者がプッシュされるかどうかは、また別の問題だ。「この子のがんばりに報いてあげたい」と思える演者がいたとき、自分たちで自由に動かせる、影響力あるメディアを持っている必要があると考えた。

またもう1つは、仮にメディアを持っていたとしても、プロデュースする目を持っていなければならないこと。ある演者がいま、俳優になりたいと強く願っているとする。本人はできるだけ「爽やかで清純な役柄」を演じたいが、素養的に、それでは一向に花が開かないかもしれない。実はその子は、徹底的に「意地悪な役柄」を演じてこそ初めて国民認知を得る、そんな才能を持っているかもしれない。

100万人のマスでも、濃いファン1000人でもいい

そんなとき、客観的な視点をもって、あえて対局にあるキャラを演じるように促せる機能が必要だと考える。従来、芸能事務所やレーベルが果たしている役割を、ネット世界にもかけ合わせていく。SHOWROOMでは既存の芸能事務所やレーベルとタッグを組みながら、そうしたプロデュース機能をネット配信者にどんどん提供していく、「SHOWROOMライバーカレッジ」という機関を立ち上げた。そこでは、われわれ自身が育成やプロデュース機能を持って、偶像世界、作品世界に出ていきたいという演者も、幅広くサポートしていく。

━━そのための打ち手がsmash.であり、ライバーカレッジであったと。演者が好きなことで生きていくにはいろいろなやり方があります。

一言に芸能やエンタメと言っても、広くあまねく1人でも多いファンを対象にするのか、あるいは限られたファンに向けたプレミアムサービスを提供するのかで違う。「幅と深さのどちらでビジネスをするのか」という観点で切り分けてみると、似ているようで景色の違う世界が広がっている。

チャンネル登録者数10万から100万人まで行けば、「幅をtoB(企業向け)で収益化」していけるとして、エンタメを志すほとんどの人々が「登録者数1000人」の壁すら超えられないと思う。でも、ファン数が1000人以下の人たちは、エンタメをやってはいけないのか? 違うと思う。その1000人の熱量が濃く、その演者によって幸せを得ているのであれば、1つのスターのあり方として、「深さをtoC(個人向け)で収益化」していくことで成立するエンタメ世界があってもいい。

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