開発者重視を明確化、アップルが開放戦略へ 開発自由度の向上に「キット」で対応

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アンドロイドはiOSより開発自由度が高く、バリエーションが豊富。他方で、有料アプリの売り上げなどの「市場性」では、開発者側からもiOSを評価する声が大きい。開発者にとっての利便性を重視し、「アップル製品を選ぶと、その周りに魅力的な商品の世界が広がっている」状況を作り上げることが、アップルとしても、直接的な商品強化につながる。

このところアップルは、OS XやiOSで「アンドロイドがやっていること」や「他社アプリが導入して好評である技術」の要素を自社OSに取り込む例が多い。今回発表した新OS向けの機能群もそうした要素が多く、目新しさが薄い、とも言われる。

だがその裏にあるのは、まずはアンドロイドに負けない機能を搭載したうえで、アップル製品向けの高い品質で差別化したい、という意識なのだろう。

批判が多かった開発自由度の向上に「キット」の形で応えることで、iOS8以降、アップルは「アンドロイドにはできるがiOSでは難しい」という批判に対処しようとしている。日本市場では、評判が芳しくなかったiOSの日本語入力機能を、他社製のものに置き換えや強化を可能にする機能の追加が重要だ。ATOKの開発元であるジャストシステムは「待ち望んでいたこと。前向きに開発情報の詳細を調査している最中」と話す。ただし、現状では技術情報が不足しているため、「iOS版ATOKが出せる」と断言できる状況にはないようだ。

アップストアも改善

同時にアップルは、アプリストアである「アップストア」の改善にも取り組む。アプリの検索性・発見性を高めたうえで、複数のアプリを束ねて販売する仕組みも整え、アプリメーカーがビジネスを行いやすい環境を整える。ここでも、アップルの戦略は一貫している。

とはいうものの、「開発者重視の姿勢」が、実際にアプリや周辺機器の商品性として市場で評価されるまでは、最低1年程度の時間が必要になる。即効性のあるものではないが、スマホ・タブレットが定着しつつある今、アップルとしては長期戦で臨もうとしているのだろう。

開発者会議という場所柄ゆえか、今回は限定的なメッセージに終始した印象も強い。5月28日に発表したビーツ買収に関する戦略、音楽のストリーミング配信への対応など、自社のコンテンツ施策については、まったく触れなかった。そうした点は今秋の新製品発表とともに明らかにされるのかもしれない。

週刊東洋経済2014年6月14日号〈6月9日発売〉掲載の「核心リポート05」を転載)

西田 宗千佳 フリージャーナリスト

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にしだ むねちか / Munechika Nishida

得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、『アエラ』『週刊朝日』『週刊現代』『週刊東洋経済』『プレジデント』朝日新聞デジタル、AV WatchASCIIi.jpなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』(アスキー新書)、『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 』『電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(すべてエンターブレイン)、『リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ』(TAC出版)、『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(共著、徳間書店)、『災害時 ケータイ&ネット活用BOOK 「つながらない!」とき、どうするか?』(共著、朝日新聞出版)などがある。

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