凋落が著しかったドル円取引、その背景を読む 「狭い値幅」の背景には、過去最低の取引高

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ちなみに国際決済銀行(BIS)が行う3年に1度の外為調査によれば、2004年にシェア8.0%で世界第3位の為替市場だった東京の地位はシンガポールや香港に抜かれた結果、2019年時点で4.5%と5位まで落ち込んだ。このうち2016年から2019年のシェア低下幅(6.1%から4.5%へ1.6%ポイント減少)が非常に大きかったことにも、YCCを受けた円、ひいては日本経済への関心低下がうかがわれる。

来年も為替や金利は動かず、株が主役か

以上、近年のドル円相場の値幅が小さくなっている背景を簡単に検討してみた。①~③のすべてはある程度事実であって、どれか1つが原因というわけではなさそうである。2021年を見通せば、②の需給がどう変わってくるかで円相場の変動も出てきそうだが、①や③の状況が大きく変わることもなかろう。

とりわけ①、すなわち「動かない金利」についてはFRBのドットチャートを持ち出すまでもなく、あらゆる金融資産取引の前提になってしまっているようだ。その筆頭こそが今年最も耳目を集めたテーマであろう「実体経済と乖離する株高」である。2021年はその株価が断続的に動揺する展開に構えたいところ。またも主役は為替や金利ではなく株。そのような年になってしまいそうである。

もちろん、企業・家計部門にとって為替は安定しているに越したことはない。しかし、「動かない」に慣れすぎると、変動への準備を怠りがちである。あくまで「変動」為替相場の世界に生きていることは忘れないようにしておきたい。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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