凋落が著しかったドル円取引、その背景を読む

「狭い値幅」の背景には、過去最低の取引高

最後に③の論点も無視できない。2年連続で史上最小レンジを更新した2019年、東京外為市場におけるドル円相場のスポット出来高は約1.5兆ドルであり、現行統計における最低を更新した。直近では2013年の約3.0兆ドルがピークであるから、6年で取引高が半分になったことになる。しかし、足元ではドル円のスポット取引高は約1.0兆ドルとさらに小さくなっており、2年連続で過去最低を更新しそうである。在宅勤務が増えたことで取引が制限されたというのもあるだろうが、それにしても低調である。

もっとも、「取引高の減少」と「狭いレンジ」の因果関係は正直、判然としない。「取引高の減少」が原因、「狭いレンジ」が結果という考え方はありうるが、取引高が小さければ値は飛びやすいという側面もあり、「狭いレンジ」にはらないという見方もある。しかし、取引高が大きくても値は動くので、両者の因果関係に確たる正解はない。

YCCで表舞台から消えた日銀

ただ1つ言えることは、日本の経済・金融情勢が注目されるような状況だったらこのような取引高にはなっていないということだ。既往ピークに近い取引高を記録した2013年はアベノミクスの最盛期で、円安・株高が世界的にも注目されていた。同程度の取引高を誇った2007~08年は金融危機の到来とともに円キャリー取引が一気に巻き戻された局面だった。この直前の2005~06年という時代は、日本だけがゼロ金利を採用していたことから世界的に円キャリー取引戦略が一大ブームだった。善し悪しはさておき、過去には円が活発に取引される理由があった。

しかし、2016年9月の総括的検証を経て導入されたイールドカーブコントロール(YCC)をもって日銀は表舞台から姿を消した。おそらく、それこそが「できるだけ早期にインフレ率+2%を実現する」という大風呂敷を広げつつも万策尽きてしまった日銀のYCCに課せられた使命だったのだと筆者は思っている。

ドル円のスポット取引高は2016年から減少が続いており、2020年で4年連続の減少となる。4年連続で減少したことなどこれまではなかった。YCCを経て日銀、ひいてはアベノミクスに率いられた日本経済への関心が雲散霧消し、円の取引高が減少し、それが狭いレンジにつながったという説はある程度、信憑性が高い。

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