凋落が著しかったドル円取引、その背景を読む 「狭い値幅」の背景には、過去最低の取引高

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ドル円相場の動きは限定的であったとはいえ、2020年、ユーロドル相場は大きく上昇した。これはなぜだろうか。やはり①以外の論点も勘案する必要があり、ここで②の論点が重要になる。結論を先に述べてしまうと、現状では円の需給環境に傾きがないということも値動きを抑制する一因になっているのだろう。

例えば2020年の日本の貿易収支は上半期(1~6月)こそ合計でマイナス2.2兆円と広がったが、下半期に入ると黒字基調に戻り、11月までの合計ではマイナス730億円とほぼ均衡している。一方、ユーロ圏は2019年対比で減少が見込まれるものの、2020年も世界最大の経常黒字国の地位を保つであろうし、しかもその中身のほぼすべてがアウトライト(買い切り)のユーロ買いに直結しやすい貿易黒字である。

こうした両者の差が円とユーロのパフォーマンスの違いに影響している部分は小さくないと考えられる。やはり「金利差なき世界」では実需が尊重されるというのは重要なポイントである。

需給がほぼ均衡していること

ちなみに、貿易統計を含めた国際収支統計全体から試算した円の基礎的需給バランスを見てみると、2020年1~10月までの合計が1.5兆円の円売り超過となっている。10カ月間の国際収支合計から得られる需給の傾きが1.5兆円というのは非常に小さいものである。2018年も2019年も基礎的需給バランスの偏りはほとんどなく、円売り超過が続いてきたことがわかる。その2年間が連続して過去最小レンジだったことと無関係ではないだろう。

確かに日本の経常黒字は世界で2番目に大きいものだが、その中身のほとんどが第一次所得収支(対外金融債権・債務から生じる利子・配当金など)の黒字であるため、為替取引(円買い)の源泉としては期待しづらいものがある。狭いレンジの背景は実は「売り買いが拮抗しているから」という非常にシンプルな理由なのかもしれない。

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