コロナ変異種「水際対策」すでに手遅れなワケ 英国が気付けたのは圧倒的ゲノム解析のおかげ
ちなみにイギリスのウェールズの人口は300万人だが、ここで先週行われた新型コロナのゲノム解析は、人口6700万人のフランスでコロナ禍となってから行われてきたゲノム解析をすべて足し上げたものよりも多い、とウェールズにあるカーディフ大学のトーマス・コナー教授(病原体の変異が専門)は指摘する。
「おそらく、似たような変異種は世界中で出現している」というのがコナー氏の見立てだ。「そして、他の場所で発生して周辺地域へと広がりながらも、解析が行われていないために完全に見落とされている変異種がいくつも存在する可能性は高い」。
仮に変異種が従来のウイルスに比べて実際に著しく感染力が高いことが確認され、さらに感染が広がったとしたら、世界で進むワクチン接種計画もこれまでどおりとはいかなくなる可能性がある。
ワクチンは6週間以内に用意できる
西側諸国で初めて緊急承認されたコロナワクチンをファイザーと共同開発したビオンテックのウグル・シャヒンCEO(最高経営責任者)は、今回の変異種がワクチンの有効性に与える影響について、実験結果が出そろうまでには約2週間かかるとし、こう述べた。
「(有効性に影響を及ぼすことを示す)データが出るまでは、心配する理由はないと考えている」
変異種に合わせたワクチンが必要になったとしても6週間以内に用意できる、とシャヒン氏は22日の記者会見で語った。ただ、それには規制当局から追加の承認が必要になるため、利用開始はもっと先になる可能性があるとした。
もっと強力なウイルスが出現すれば、パンデミックを終わらせるのに必要な免疫レベルを達成するのは一段と難しくなる、とも語っている。「ウイルスが感染力を高めてきた場合、元の日常を取り戻すには、ワクチンの接種率をもっと高めなければならなくなるかもしれない」という。
(執筆:Marc Santora記者)
(C)2020 The New York Times News Services