コロナ変異種「水際対策」すでに手遅れなワケ 英国が気付けたのは圧倒的ゲノム解析のおかげ
各国は今週、イギリスに対して次々に国境を閉じた。その慌ただしい動きは、新型コロナウイルスが初めて世界各地で確認され始めた春の反応を思い起こさせる。このとき各国が打ち出した渡航・入国禁止措置は、ほとんどが手遅れだった。ウイルスがいろいろな場所に入り込んだ後だったからだ。
各国は水際対策を強化し、イギリスで新しく特定された、より強い感染力を持つとみられる変異種の侵入を防ごうとしている。だが今回も手遅れかもしれない。専門家によれば、この変異種の流行はすでに広範囲に広がっているおそれがあるからだ。水際対策を強化すれば、経済的、精神的な苦痛は強まるが、そのような対策を講じてもウイルスの犠牲者は増え続ける可能性がある。
イギリスだから見つけられた
「(水際対策は)ばかげている」。こう一蹴するのは、ドイツのチュービンゲン大学病院のペーター・クレムスナー医師だ。
「この変異種が(イギリス本土の)島にしか存在しない場合においてのみ、イングランド、スコットランド、ウェールズに対して国境を閉じる意味が出てくる。しかし、すでに他の場所に広まっているのだとしたら、あらゆる場所でこの変異種との闘いを進めなければならない」
クレムスナー氏は、変異種については科学的にわかっていないことが多く、危険性も未知数だとしたうえで、こう指摘した。イギリスの外ではまだ感染が広がっていないと考えるのは甘い——。
イギリスは世界でも最先端のゲノム監視体制を持っている。だからこそ、他国なら気づかないままとなっていた可能性のある変異種でも見つけることができた、と専門家らは指摘する。