コロナ変異種「水際対策」すでに手遅れなワケ 英国が気付けたのは圧倒的ゲノム解析のおかげ

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世界保健機関(WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は、変異種に対し、加盟国は一貫した対策の取りまとめを進めることになるとした。ただ現時点では「さらなる情報が得られるまで、渡航・入国を制限し(変異種の)拡散を抑えることが賢明だ」とツイートしている。「対策が行き渡るまでは、誰も安全とはいえない」(クルーゲ氏)。

アメリカでもイギリスからの渡航禁止を求める声が強まっている。だが、アメリカにおける感染症研究の権威、アンソニー・ファウチ博士は、変異種がアメリカに入り込んでいる可能性は高い、と注意を促す。

「そのような厳しい措置が必要だとは考えていない」。ファウチ氏は21日夜、公共ネットワークPBSの報道番組内でこう語った。「イギリスからアメリカに来る人については、渡航前検査の義務付けを真剣に検討するべきだと思う」。

ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、イギリスからのニューヨーク行きのフライトでは搭乗者に陰性結果の提示を求めることでブリティッシュ・エアウェイズ、デルタ航空、ヴァージン・アトランティック航空から同意を得たと語った。連邦政府が対策に動かない中、他の州や地域の指導者からも同様の措置を求める声があがる。

国家間移動を止める弊害は大きい

すでに多数の国が、入国に際し陰性結果を求めるようになっている。しかし、国家間の移動を完全に止めれば、弊害は大きい。

欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は加盟国に対し、必要不可欠な渡航が可能となるよう、イギリスからの全面的な入国禁止措置を解除するよう促した。

ただ、現時点では各国は独自規制を選んでいるようだ。フランスとの国境は20日に閉鎖されたため、1000人を超えるトラック運転手が足止めをくった。これを受けてフランスは22日に閉鎖措置を緩和。ウイルス検査で陰性が確認された人の一部が入国を許されることになった。

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