コロナ禍でガラリ一変「2020年ヒットCM」の法則 リモート撮影やアニメ化、新たに生まれた工夫

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以下この1年のCMについて、制作手法の変化やクリエーティブの傾向を振り返っていく。1月中旬に国内初の感染者が確認されて以降、徐々に事態は深刻化し、2月27日には政府が小中高校などに臨時休校を要請。3月25日には小池百合子都知事が週末の外出自粛を要請した。この頃から不安な人々の心に寄り添うメッセージを発信するCMが相次いでオンエアされた。

ネスレ日本『キットカット』は香取慎吾が「いっしょにがんばりましょう」と描かれたアートを創作するCMを3月27日より放送。大塚製薬『ポカリスエット』は大勢の中高生がそれぞれ自宅で歌う自撮りの動画を用いて“ポカリNEO合唱”を完成させるCMを4月17日に開始し、若者たちの力強い歌声が大きな反響を呼んだ。

サントリーホールディングスは「話そう。」をコピーに石原さとみや佐藤健ら37人の著名人が数人ずつビデオ通話で語らうCMを展開した。キウイブラザーズがゆったりとしたテンポの楽曲を歌い踊る『ゼスプリ キウイフルーツ』のCMには「癒される」「心が和む」などの声が数多く寄せられた。このほか森三中を起用した新聞広告や、CMソングを軸にしたデジタルコンテンツなども話題となった。

ゼスプリ インターナショナル ジャパン/ゼスプリ キウイフルーツ TVCM 2020「好きなことを楽しみながら」篇 60秒

また藤子・F・不二雄プロと藤子ミュージアムによる「ドラえもん『STAY HOME』プロジェクト」は、「だいじょうぶ。未来は元気だよ。」とマスク姿のドラえもんが呼びかける新聞広告や母の日をテーマにしたCMなどで反響を呼んだ。

苦肉の策から生まれた新しい制作手法

通常通りの撮影が困難なことから、リモート撮影や人気CMのアニメ化、過去のCMの再編集など制作手法にもさまざまな工夫が見受けられた。

モスフードサービスは2種類の味の『モスライスバーガー』がお笑いコンビ・ぺこぱの漫才に合わせて動くCMをオンエアした。サントリー食品インターナショナル『ボス』は過去のシリーズCMを再編集した90秒CMを展開。“宇宙人ジョーンズ”がコロナ禍の地球人にアドバイスをする内容で、地上波では3回の放送ながら高い評価を得た。

UQコミュニケーションズ『UQ』は深田恭子ら出演の「UQ三姉妹」シリーズの第1弾CMの映像に、「これずーっと前のCMよね」などの語りを重ねたCMを展開した。

コロナ禍が常態化するとともに、新しい働き方や“おうち時間”の充実にフォーカスしたCMも目立った。Sansanは会社員役の松重豊と野間口徹がオンライン商談での名刺交換などについてビデオ通話で相談するCMを放送。サイボウズは「がんばるな、ニッポン。」をコピーに、マスク姿で通勤する大勢の人や閑散とした同社のオフィスを映すCMでテレワークの推進を提案し、多くの反響を呼んだ。

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