フランス人が感じた日本の柔道が抱える「問題」 フランスでは稽古は楽しいが、日本ではきつい
名古屋大学の内田良准教授は2011年、1983年から2010年までの間に、少なくとも114人の子どもが学校で柔道中に死亡していたことを明らかにした。
「韓国や北朝鮮など他国にも、適切に算入されていない被害者がたくさんいるかもしれません。しかし、日本の数は例外的です」とフランス人柔道家のミシェル・ブルース氏は語る。同氏はヨーロッパで3度チャンピオンになった後、コーチや専門家、国際審判として活躍しており、68歳になった現在も柔道を続けている。
「私は1970年代に日本で初めて稽古を受けました。道徳的にも身体的にも暴力的でしたが、それは大人同士だからまだ許容できた。ですが、例えば指導者より130キロも体重が軽い、15歳も年の離れたような子どもに同じことをするのは、大人として許されないことです」
状況は改善しているが…
バルセロナ五輪銀メダリストの柔道家で、スポーツ社会学者でもある溝口紀子氏は、「この暴力を止めなければならない」と話す。彼女は15歳の時、同級生が稽古中に棒で殴られて死んだと聞いたときも驚かなかったという。学校も彼の両親も警察には通報しなかったと溝口氏は振り返る。「誰も彼のために声をあげませんでした。それでも私はとにかく柔道を愛していました。それが私の人生でしたから」。
小林氏や、青少年スポーツ安全推進協議会の理事を務める武蔵さんの両親の尽力によって、ここ10年状況は改善されている。全日本柔道連盟は被害者の訴えを聞き、指導者に向けた啓蒙活動を実施しており、指導者はライセンスを取得しなければいけなくなった。「私はかつて連盟で、300人の前で話をしたことがあり、聞いていた人の何人かが自分が受けた暴力について話してくれました。それは驚くべきことでした」とブルース氏は回想する。
今回、筆者は柔道連盟に取材を申し込んだが、連盟からは「暴力問題の根絶につきましては最重要課題の1つとして取り組んでいるところでございますが、東京オリンピックに向けた公務の関係で山下(泰裕会長)の予定が取りづらい状況となっております」という返事がきただけだった。
状況は多少改善しているとはいえ、10年間で少なくとも7人の子どもが稽古中に死亡していると小林氏は訴える。
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