実例で学ぶ「売り上げを伸ばす」デザインの凄技 センスだけに頼らない「書体」と「色彩」の使い方

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続いて、「色」の使い方の原理原則についてです。「カラーマーケティング」を例にとりましょう。

ある企業がそのブランドの顧客を増やすために、キーになる色を絞り、ブランドの価値と独特の色使い(配色)をセットで印象付けることをカラーマーケティングと呼びます。

カラーを使った認知がうまくいっているブランドとしてまず思い浮かぶのが、ティファニー(Tiffany)社です。ティファニー社のブランドカラーはグリーンがかかった鮮やかすぎず明るすぎもしない、独特なブルーです(「ティファニーブルー」と呼ばれています)。この色彩を見ると、多くの人はティファニー社を思い出します。

マーケティング活動において、独特の色彩はブランドのアイデンティティにもなり、ロゴなどの識別記号(の代わり)となることが可能です。

このような色によるブランドマーケティング(ブランド戦略)を始める際には、自社の製品展開やイメージ、価格帯、競合や先行ブランドを常に把握し、市場動向を見ながら「色彩戦略」を立てることが重要になります。

いくら独特のブルーを使っているからといっても、必ずしもお客さんの頭の中に「ブランドを識別できる記号」とはならないので注意が必要です。

では、世界規模の有名企業でなくては、色彩を使用したブランド戦略はできないのでしょうか。緻密な戦略を立てずとも、もっと、色を効果的に使う方法はないのでしょうか。

物産イベントで目立った防府市のピンク色

山口県の中央部にある防府市では、観光や地方創生に関わる幾つかのプロジェクトやブランド施策がきっかけで、「幸せます」という取り組みが生まれました。ピンクとそれに合わせたカラーパレットを、多くの市民がイベント時などで使用し、「幸せます」を文字商標化して、地域ブランドに活用しています。

例えば、市の何かしらの重要行事の日には、誰かが掛け声をかけたりしなくても、行政職員や観光のスタッフから会議所の重鎮まで、以前のイベントでしつらえたピンクのジャンパーなどはもちろん、私服のシャツやネクタイ、女性であればスカートやワンピースなど、自然発生的にピンク色を着た人が湧いてきます。

また、多くの関係商品も開発されています。そういう光景を一度でも目にすると、私のような部外者も、「そうだ、今日は防府に行くから、ピンク色を着ていこう」などと考えます。

今時のテレビタレントやアイドルグループなども、全員の衣装が完全なお揃いではなく、なんとなくの統一感で衣装合わせをして登場したりしますが、その状態が、市役所と会議所と商店街や高校といった地域ぐるみで誰ともなく、できあがっていること自体が、かなりパワーを持ちます。

実際に、東京の世田谷区にある三軒茶屋の商店街で開催された山口県の物産イベントで、防府市だけがなんとなく全体がピンク色に染まっていて、遠目からでも、かなり目立っていました。

こういった地域や季節行事のマーケティング活動においては、特別なコンセプトが必要ない年中行事なども多々あります。そのような際も、困ったときは「何色」(防府市の場合はピンク)にする、のような共通認識(=ブランドカラー)があれば、現場は楽になりますし、予算のないイベントなどでも結果が出しやすくなります。

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