ワークマンが「データ経営」に取り組んだ必然 きっかけは創業者に頼まれた1つのことだった

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ワークマンの土屋専務は「データがあると(社内)議論が起きやすくなる」と話した(撮影:尾形文繁)
一般客向けもターゲットにした新業態「ワークマンプラス」をヒットさせるなど、ここ数年のワークマン飛躍の立役者である土屋哲雄専務。新卒で三井物産に勤めてきた土屋専務は60歳の定年を迎える直前、ベイシアグループ創業者の土屋嘉雄氏に呼ばれ、2012年にワークマンに入社した。同社で徹底する「データ経営」のきっかけは、創業者から言われた1つの“お願い”だった。

創業者から受け継いだ「しない経営」

――ベイシアグループ創業者の土屋嘉雄さんは哲雄さんの叔父に当たります。哲雄さんから見た「嘉雄イズム」とは?

めちゃくちゃ慎重。

良い意味でのコンサバティズムがある。わき目をふらず、「あれしろ」「これしろ」と言わない。

私が嘉雄さんから受け継いだのは、「(余計なことを)しない経営」と在庫に対する警戒心。ベイシアグループの社員は、どの会社でも在庫に対する“恐怖心”が浸透している。在庫をきちんとコントロールして、オペレーションを重視して、ローコスト経営を徹底する。

――創業者に話を聞くと、土屋哲雄専務について「三井物産という世界企業で培われた視野は貴重。若い人たちに大きなインパクトとなり、目標になる人材だ」と答えました。

つちや・てつお/1952年生まれ。東京大学経済学部卒業後、1975年三井物産入社。1988年三井物産デジタル社長、2006年三井情報開発(現・三井情報)取締役執行役員などを経て、2012年にワークマン顧問就任。常務取締役を経て2019年から現職(撮影:尾形文繁)

私がワークマンに入ったとき、嘉雄さんは「ワークマンは良い会社だから特に何もしなくていいよ」と言ったんです。でも、それに加えて「人材だけは育ててください」と。だからワークマンで「データ経営」を始めた。

データを通じて人を育てて、トップダウンではなく、現場の知恵を集めるボトムアップの経営にしようと。(社員全員がデータを使いこなせれば)上にも反論しやすいし、議論が起こりやすくなる。以前のワークマンは上意下達の会社で、社長と付き合わないと上に行けないという感じだったが、そんなことをやめるために(上司や社長との接点を持つ機会になる)社内行事も一切廃止した。

変化が起きない時代は数年の経営計画を立てられても、今は変化が多いから計画は3年も持たない。コロナだけでなく、最近の激甚災害や異常気象もそう。ワークマンはこの2年で(災害により)4店舗くらい流されて、防寒衣料が稼ぎ頭なのに今は11月でも夏日がある。

そうした「変化」に最初に気付くのは現場にいる人たち。そこから現場がいろいろな対応を工夫して、結果を報告してくれる。経営陣はその対応手法を標準化するか否かだけ判断すればいい。

この記事の続きは『東洋経済プラス』の短期連載「群馬の巨人 ベイシアグループの正体」でお読みいただけます。合せて以下の記事を配信しています。

知られざる「1兆円小売り集団」の全貌 
創業者・土屋嘉雄氏がすべてを語る
カインズ・土屋裕雅会長を直撃
ワークマン・土屋哲雄専務を直撃
データ/3つの指標でわかるベイシアグループ
真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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