2021年の株価予測で絶対押さえるべき5つの点 アメリカ株も日本株も引き続き上昇するのか

拡大
縮小

ワクチン投与が順調に進み、対面型サービス業が息を吹き返せば、現在大量の失業が発生している小売業、飲食・宿泊・レジャー業(※2020年1月時点でこれら業種は全雇用者の約2割を占めていた)の雇用者数が急劇に回復し、失業率がFRBの想定以上に低下する可能性がある。

そうした環境下において市場参加者はFRBの出口戦略を意識せざるを得ないだろう。それによって長期金利が上昇すれば、かなり割高な水準まで買われてきたグロース株を中心に大幅な調整圧力が加わる可能性が高い。市場参加者が2023年末までの金利据え置き、あるいは量的緩和の継続を疑いにかかる可能性は意識しておきたい。

(5)日銀のETF購入はどうなる?

最後に日本である。12月は日経平均株価が約30年ぶりの高値圏で推移するなか、にわかに意識されつつあるのは日銀のETF買い入れ枠縮小の可能性だ。現時点で日銀のETF買入れ縮小を見込む向きは少ないが、買入れ開始から10年が経過することもあり、今後議論が活発化する可能性はある。

一部の市場関係者や政策当局者は買い入れ縮小の必要性に言及し、また将来的な出口戦略として個人投資家に売却する案が取りざたされている。日銀の買入れ額は3月に約1.5兆円に膨れ上がった後、株価回復を受けて漸減傾向にあり、11月はわずか1500億円程度に減額されている。最大12兆円の買い入れ枠は事実上“見せ金”となっている。

政策変更を伴ったETF買い入れ枠の減額はない

では、日銀は近い将来にETF買入れ枠の縮小に踏み込むのだろうか。筆者の見解は否である。というのも、コロナ禍発生前の2020年1月に年間買入れペースが4兆円程度に減速していた経緯があるからだ(2019年の年間買入れ額は4兆3772億円)。

現在、日銀は6兆円を原則、20年3月からは時限措置として12兆円を限度に買入れる方針を示しているが、一方で声明文の注釈には「(買い入れ額は)市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする」とある。

実のところ日銀がこの注釈をフル活用すれば、政策変更の発表を伴わずに買入れペースを落とすことが可能であり、既にその実績もある。今後も株価が安定を保つのであれば、日銀は新たな下限に挑戦し、買い入れ額を減額すると思われる。仮に日経平均が3万円を回復するなどしても、政策変更の発表を伴ったETF買入れ枠の減額はないだろう。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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