ユーグレナが「青汁」キューサイを買収する訳 「ミドリムシ」との事業シナジーはあるのか

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キューサイの販路はテレビ通販が主で、顧客層もシニア層に偏っている。会社業績を再成長の軌道に乗せるには顧客基盤をシニア層からケータイやネットをよく使う50歳代のプレシニアより下の世代に広げることが不可欠。そのためにもテレビや電話などのオフライン通販からネット通販へシフトする必要がある。

買い手であるユーグレナは、キューサイと同じようなテレビや雑誌などに多額の広告宣伝費を投入し、健康飲料や化粧品の定期購買者を募る直販売り上げを拡大してきた。直販比率は売上高の約7割を占めるが、広告宣伝費に見合う売り上げが次第にあがらなくなり、2018年春以降は広告宣伝費に急ブレーキをかけた経緯がある。

投資効果に基づき広告媒体を絞り込み

その後、投資効果に基づく広告宣伝媒体の絞り込み、テレビや紙媒体などのオフラインからネットなどを使ったオンラインへの販売チャネルのシフト、新商品の投入と若年層の開拓などを進めた。その結果、2020年春ごろから定期購買者や直販売り上げが反転増となり、広告宣伝費も積極拡大させ始めた。

ユーグレナはキューサイ買収で再成長できるのか。写真は2019年2月の共同発表会における出雲充社長(撮影:風間仁一郎)

「ユーグレナのここでの経験が同じ問題を抱えるキューサイにも生かせる」と永田副社長は言う。もちろんユーグレナだけの力に限界があるのも事実で、だからこそ企業再生や経営改善で自社にはない圧倒的な実績とノウハウを持つアドバンテッジなどの手を借りる必要があったわけだ

ユーグレナ自身にとってもキューサイを子会社化するメリットは大きい。

キューサイの強みであるテレビ通販チャネルを活用できるほか、全国的な物流網や調達網も魅力的だ。両社が同じグループになれば共同調達など規模拡大のメリットも出る。永田副社長いわく、「社内にはユーグレナ、キューサイの両社のいいところを採用する。キューサイに対し親会社めいたことはするな」と社内に呼びかけているという。

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