名将エディーが難敵に仕掛けた壮絶な"心理戦" 「やるかやらないか」それが問題だ

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日本のラグビー界や麻雀用語で使われる言葉に、“トイメン”という言葉がある。

チームスポーツや、混沌とした状況のゲームで繰り広げられる、1対1の戦い(対面から来ている)とでも言おうか。サッカーをはじめとしたさまざまなスポーツで、“デュエル”という言葉でも呼ばれている。私は選手時代もフッカーとしてスクラムの中で“トイメン”と徹底的に戦った。そしてヘッドコーチとなった今も、トイメンとは徹底的に戦う。

翌日の記者会見では、再び私が見出しを飾る言葉を発して、世界中のラグビーファンが私の言葉で騒ぎ出し、踊り出す。相手ヘッドコーチの頭に私の言葉を植え込んでいったのだ。

ちなみにこのオールブラックスのヘッドコーチとは、同業者として長くいい付き合いをしている。好敵手だからこそ徹底的な精神戦を仕掛けるが、試合が終われば笑って一緒にビールを飲めれば、それでいいと考えている。

ハカに対して与えたプレッシャー

迎えた準決勝当日。ホテルでの朝食後のミーティングでは、緊張しながらも選手たちの目は勝利への願望で輝いていたのを覚えている。

「試合開始後の最初の1分間は、相手に全力で襲いかかるつもりでいけ。やってやろうぜ!」

試合の序盤で激しくプレッシャーをかけろと、はっぱをかけた。先手をとれというメッセージだ。そしてわれわれは試合前にある仕掛けを用意していた。

ニュージーランドには、マオリと呼ばれる先住民の伝統が今でも残っており、代表戦の試合前には「ハカ」(あるいは、ウォー・クライ)と呼ばれる儀式を行う。通常ハカに対峙するチームは、センターライン上に一列に並び、黙ってそれを見守るしかない。

だが、この日のイングランド代表の選手たちは、主将のオーウェン・ファレルを中心に両サイドが迫り出した、V字型の陣形でハカを取り囲んだ。前例がないわけではなく、2011年のワールドカップ決勝戦では、フランス代表が矢じりのような形をとってハカに対峙したことがある。とにかく大舞台での対決を前に、相手の威嚇を黙って受けるつもりなどない、という意思表示をした。

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