名将エディーが難敵に仕掛けた壮絶な"心理戦" 「やるかやらないか」それが問題だ
試合中に「愛してるよ」とつぶやいたワケ
ラグビーというゲームで私は心理学をよく使う。これは選手時代からの習慣だ。
背も低く体が小さかったが、それを理由に選手になることを諦めたくなかった。ラグビーは、激しいコンタクトプレーが連続するスポーツ。体格差は大きなハンデだったが、ほかの要素でチームに貢献しようと考え、努力した。試合の流れを読む、連携プレーのサポート、そして相手に精神的なプレッシャーを与えることだ。
「ラグビーは紳士のスポーツ」と日本では言われている。しかし当時オーストラリアのラグビー界では、グラウンド上で選手が互いに激しい言葉を浴びせる光景は珍しくなかった。相手をいら立たせ、冷静さを失わせることが勝利につながるのであれば、やらないという選択肢はない。そういった雰囲気があった。
ある試合で、フッカーというスクラムを最前線で組むポジションで出場していた私は、スクラムを組む直前に相手のプロップの選手の頬にキスをし、「愛してるよ」とつぶやいた。
相手選手は予想もしていなかった私の言動に驚き、スクラムを妙な体勢で組んでしまった。プロップはスクラムを支える柱だ。そこをへし折ったことで勝負は一気に優位にすすみ、楽に相手を押し込むことができた。さらにその後試合中、スクラムを組む度にこの選手に向かって微笑み、時にはウィンクをしてみせたりもした。この相手は試合を通して、明らかに私とスクラムを組むことを嫌がっていた。
おかしな例だが、相手の精神状態を乱す小技とは、こういうものだ。
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