三井不動産、東京ドーム買収後に直面する課題 膨張する財務、ドーム再建に向けては要時間
財務規律を意識する限り、三井不は今以上に利益を伸ばすか、物件を売却して資産を軽くするかの二択を迫られる。だがホテルや商業施設の傷が癒えない中では、三井不自身の業績もV字回復は難しい。
物件売却を急ぐにしても、同社の保有物件の多くを占めると見られるオフィスビルについては、先行き懸念が頭をもたげる。前述の新宿三井ビルの売却先である日本ビルファンドは10月9日にビルの取得および公募増資を発表したが、その後投資口価格(株価)は右肩下がりが続き、今年3月の暴落時に付けた55万5000円をも割った。
新宿三井ビルに関しては、売却後もテナントの空室や賃料下落リスクは三井不が負うという「売り手と買い手のどちらかにメリットが偏らないよう、努力した跡が見受けられる」(UBS証券の竹内一史シニアアナリスト)取引だったが、オフィスビルの先行きに対する投資家の懸念が勝った形だ。
12月10日にオフィス仲介の三鬼商事が発表したオフィス空室率によれば、空室が取り沙汰されていた渋谷区だけでなく港区も節目となる5%を超えた。「渋谷区はオフィス面積が少ないため、少し空室が出ただけで数字が跳ねる」というオフィス業界のこれまでの説明は、3倍の貸室面積を有する港区には通用しない。機関投資家の中には、オフィスの稼働率や賃料水準をこれまでより厳しく見る向きもある。
「再建」へのロードマップ、どう描く
三井不の収益が伸び悩めば、株主の矛先が今度は三井不自身へと向く。同社は都心の複合開発における投資基準を「実質利回りで5%」と据えており、利回りの劣る物件を売却しては、新たな開発に資金を振り向けている。この点、東京ドームの足元でのキャッシュフローは赤字。建て替えにも時間を要し、買収にかけた資金回収ははるか先。三井不の物差しで図れば決して投資効率は良くない。
東京ドームは新しい中期経営計画を策定中で、内容には三井不も関与する意向を示している。「東京ドームなんぞ手放して、ほかの不動産を開発しろ」と主張する物言う株主を二度と出現させないためには、東京ドームの経営とドーム立て替えという2つの「再建」へのロードマップをどう描くかがカギを握る。
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