外国人ゼロで気づく「日本のスキー場」の本質 スキーもスノボもしない贅沢スノーリゾートへ

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過去の国内スキー人口の減少には、レジャーの多様化、若年層の車離れ、施設の老朽化による魅力低下など、さまざまな原因に加えて、道具を揃え、雪上で慣れない運動をするスポーツとしてのハードルの高さもあったように思います。

筆者個人としてはスキーの楽しさに魅了されこの世界に飛び込んだこともあり、多くの人にスキーを楽しんでもらいたいという思いが強く、スキー場としての魅力向上を何より大事に考えています。しかし、その楽しさを感じる層は既に人口の5%しかいないのです。残りの95%のスキー・スノーボードをしないお客様にも、冬のスノーリゾートに足を運んでもらう努力は不可欠です。

長年東京で暮らしてきた筆者が白馬に移住して6年。こちらで欧米のお客様の過ごし方を見て発見したのは、「雪山の上でスポーツをしない時間の圧倒的な爽快感」です。

真っ白な雪の上、抜けるような青空の下で屹立する岩壁を目の当たりに、焚き火に当たって音楽を聴きながら一杯の美味しいホットチョコレートを楽しむ。それはまるで、ビーチリゾートでエメラルドグリーンの海を眺めながらカクテル片手に読書を楽しむような、贅沢なリゾートとしての非日常的な時間と空間です。

スキー場でスキーもスノボもしない贅沢

欧米のスノーリゾートでは、屋外席も多く用意され、お酒やコーヒーをゆっくり楽しむこともできるほか、ライブ演奏なども頻繁に行われ、さまざまなアクティビティも提供されるなど、スキー目的以外のお客様でも1日楽しく過ごせる仕掛けが充実しているところも実際多いのです。

こうした新しい「スノーリゾート」としての楽しみを提供する努力を全国のスキー場が続け、多くのお客様が来てみたいと思うきっかけを作ることが、今後の新たな市場開拓には必要でしょう。

スキー場としてだけでなく「リゾート地」として全体でキャッシュを稼ぐ力を強化して初めて、スキーヤーやボーダーにとっての魅力向上となるリフト、施設やコースのリニューアルを行うことも可能になります。その際、地域だけでは賄いきれない投資も多いため、今年度から予算化された「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」などを通じ、国の支援策を続けていくことも有効だと感じています。

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