取引先との関係維持などを目的とする政策保有株式(株式持ち合い)に対して、投資家から厳しい視線が注がれている。2019年3月期の有価証券報告書から開示対象が拡大したが、政策保有株式の削減はどの程度進んでいるだろうか。
東洋経済新報社では全上場企業の政策保有株式について、最新時点での集計結果をまとめた。データは2019年4月期から2020年3月期までの、有価証券報告書に記載された内容から取得。貸借対照表の計上額が多い順にランキング、保有銘柄数や前期比の銘柄数増減率についても併載した。
なお、ホールディングス制度を採用する企業については、傘下の連結子会社が保有する銘柄数も開示している場合には、ホールディングと連結子会社の合計数で貸借対照表計上額、銘柄数を集計している。
ランキングの上位は金融機関が占めている。1位は三菱UFJフィナンシャル・グループ、2位に三井住友フィナンシャルグループ、3位がみずほフィナンシャルグループと、メガバンクがトップ3を占めた。直近決算期末時点の貸借対照表計上額で、1兆円以上の政策保有株式を保有する企業が9社、1000億円以上の企業は82社あった。
【2020年12月23日12時20分追記】初出時、本文中の順位に一部誤りがあったので、下記のように修正しました。
一般事業会社の上位にはトヨタ自動車や京セラ
一般事業会社の中で最も貸借対照表計上額が大きかったのはトヨタ自動車で、ランキング5位だった。保有銘柄数では174銘柄と少ないものの貸借対照表計上額は2兆0759億円に上る。トヨタ自動車の保有銘柄には資本提携先のSUBARUやマツダの保有株が含まれる。
このほか、京セラは69銘柄の保有で1兆1535億円の貸借対照表計上額を有し、ランキングで8位に入った。創業者の稲盛和夫氏がKDDIに合併されたDDIの設立に関わったことからKDDI株の10%強を保有するほか、再建に関わった日本航空株も保有している。
このように一般事業会社は保有銘柄数は少なくても、関係性のあるグループや関連企業間の株式保有規模が大きいため、貸借対照表計上額でみると多くなるケースがある。
政策保有株式は削減が進んでいるとはいえ、依然としてその規模は大きいこともわかった。上場企業の決算期末が集中する2020年3月期末で、上場企業の合計時価総額は約550兆円。
一方、全上場企業の保有する政策保有株式の合計を足すと約52兆円だったので、単純計算で株式市場全体の1割弱を占めている計算になる。現在、日経平均株価はバブル期以来の高値を記録している。政策保有株式を高値で売却するのにはいい局面とも考えられる。株式市場の1割を占める政策保有株の売却が加速すれば、需給に与える影響は少なくないため、各社の動向が注目される。
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