日本企業は「現場のインド」を知らない インフォブリッジグループ 繁田奈歩代表(上)

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三宅:それは日系企業だけですか。外資系企業でも同じようなケースはあるのですか。

繁田:ありますね。「インドに行くとお腹をこわす」と思っているのは日本人だけではありません。タイ人だって、「絶対にインドでアイスクリームは食べません」と言っていましたし(笑)、欧米にも、インドに対する先入観はあります。昔アメリカに行ったとき、「普段インドに住んでいる」と言ったら、「よくやるねえ。俺はそんなところは絶対に行かない」と言われました。

ただ、欧米と日本では前提条件が根本的に違うなというのがあります。インドでビジネスをするのはそれほど難しい話じゃないけど、何か新しいチャレンジをしようと思ったら、リスクゼロというのはありえないでしょう。そのときに欧米企業は新しいことにリスクはつきもの、あるいはマネジするものと考えるのに対して、日本企業の場合は、リスクがゼロじゃないと何も始められない、リターンを得るためにはリスクがつきものであるということへの理解の違いがあるという感じがします。

ターゲットではなく、上司を見ている

三宅:なるほど。外資系企業から調査依頼を受けるときは、調査項目やスタンスは違いますか?

繁田:実はわれわれの現地の調査会社では、日系企業からの依頼は2割から3割弱くらいで、残りはインドや欧米の企業なのですが、日本企業の人たちが思っている以上に、欧米企業もインド企業も、市場調査しているなという印象があります。特にターゲットとなる人たちの動向はつかんでおくべきだと考えて、しっかり情報武装をしています。

でも日本の場合はまず商品ありきで、市場を見ようとしないという傾向が強いと思います。少し失礼な言い方を許してもらえるとしたら、ターゲットではなく上司を見ているから、上司が「これを売れ」と言ったらそれしか売れないという感じです。また、商品にしても、日本企業は「ありもの」をカスタマイズして現地向け商品にするという発想が前提ですが、そもそも市場が何を求めているか、何を提供すれば受け入れられるか、という視点が重要なのではないかと思います。

三宅:でも繁田さんの調査チームも、日本の企業に対して「こういうふうに考えるべきですよ」という意見を、おっしゃるわけですよね。

繁田:必ずしも私たちの提言がすべて受け入れられるとはかぎりませんから(笑)。でも日本企業が全部ダメだというわけじゃないんですよ。たとえば決めた計画のゴールに向けて軌道修正しながらステップを立てて動いていくのは、日本人はすごく得意ですね。目標になるケーススタディとか成功事例があると、そこに向けて一生懸命歩いていこうとする。そこは日本企業の得意な部分だと思います。

三宅:そういうふうに総合的に考えたとき、インドで成功している日本の大企業とは、繁田さんの目から見るとどこですか。

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