スタンフォードに優秀な研究者が集まる理由

スター研究者でさえ社交や学生との交流に注力

安田:毎年夏に、イスラエルのヘブライ大学がホストになって、経済理論の面白そうなトピックについて2週間ぐらい集中的に学ぶサマースクールが実施されているんですよね。僕と小島さんは当時アメリカの学生だったけど、世界中の大学から総勢50人くらい PhD(博士)課程に在籍する学生が集まった。

小島:もともとはケネス・アローが始めて、彼が高齢になってからはエリック・マスキンが引き継いだという非常に伝統のあるイベントですね。その2005年のテーマがマーケットデザインで、ロスやミルグロムたちが講師だった。

研究者人生に影響を与えるイベント

安田:みっちりと講義を受けつつ、途中で死海ツアーに行ったりもして。街を歩いて印象的だったのは、遺跡ですね。歴史的なものが街中に何気なく存在しているんです。これは京都に近い感覚かもしれない。ちなみに、小島さんは、このサマースクールは自分で見つけて参加しましたか?

小島武仁・東京大学教授/1979年生まれ。東京大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学部PhD。スタンフォード大学教授などを経て2020年秋から現職、東京大学マーケットデザインセンター・センター長。専門はマッチング理論

小島:僕は当時マーケットデザインに興味を持っていたのだけど、指導教官のアルヴィン・ロスが研究休暇だったので授業を受けられなくて。そんなときに、ちょうどこのサマースクールの話を聞いて参加したんです。

安田: 僕は指導教授だったパトリック・ボルトンに「洋祐、イスラエルに行ったことはあるか? 一度行っておくといいぞ」と言われて、マーケットデザインの中身もほとんど知らずに軽い気持ちで参加した(笑)。でも、いま思えば、その後の研究人生にも影響を与えたイベントでした。世界中から活きのいい講師と学生を集めて2週間缶詰にするというのは良い取り組みですね。

小島:その後、一緒に研究することになった友達と出会うなど、世界各地の研究者とネットワークを構築する機会になった。当時僕はまだ、マーケットデザイン分野では1本も論文を書いていなかったのですが、分野を切り替えるターニングポイントにもなったし、自分にとってはかなりのビッグイベントでした。

安田:このイベントがなかったら、今のマッチング理論の大家としての小島武仁はいなかったかもしれない!

小島:あはは、大家かどうかはともかく、あのイベントは僕の研究人生にとって決定的に重要でした。この秋に日本に帰国するのを機に同僚たちと東京大学マーケットデザインセンターという組織を作ったのですが、そこでもRA(リサーチアシスタント)の学生さんたちと勉強会を開いたりしています。僕や安田さんが若い頃に受けたような刺激を学生さんに与えられたらとてもうれしい。

ちなみに、センターは東大内に作った研究所ですが、純アカデミックな研究だけではなく社会実装も重要なミッションに掲げている点は、安田さんたちの会社とも少し似ているかもしれません。さっそく自治体や企業との共同研究や実装プロジェクトを立ち上げました。ウィルソンやミルグロムたちが作り上げてきた経済学の社会実装という文化を日本でも根付かせていきたいですね。

(構成:山本舞衣)

キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 映画界のキーパーソンに直撃
  • ほしいのは「つかれない家族」
  • 森口将之の自動車デザイン考
  • ブックス・レビュー
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件
会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
ソニーとパナソニック、10年で大差ついた稼ぎ方
ソニーとパナソニック、10年で大差ついた稼ぎ方
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
生前贈与がダメになる<br>相続の新常識

相続をめぐる環境が激変しています。年110万円まで非課税だった生前贈与が税制改正により認められなくなる可能性も。本特集では相続の基本から、よくあるトラブルと解消法、最新路線価に基づく相続税額、さらに生前贈与の将来動向まで取り上げました。

東洋経済education×ICT