ワクチンの特許は「独占しないほうがいい」理由 ノーベル経済学賞を受賞した最新分野の考え方
エリック・ポズナーとグレン・ワイルの2人による、「世界をより自由で効率的にするための新しいアイデアと施策」とは何か。そして、なぜそのアイデアに皆が驚き、また感嘆するのか。
2020年ノーベル経済学賞を獲得した注目分野の、新進気鋭による現在進行形のマーケットメカニズム論を解説する。
マーケットメカニズム論は「経済学の根幹」
経済学で教えられていることは数多いのだが、そのなかでも最も根本的なこととして最初期に教えられることは、「自由市場はとてもパワフルだ」ということだ。
その効用(utility、効果的な便益のこと)は計り知れないもので、皆がもし丸1日働いたお金でスマートフォンを買えたとすれば、自由市場がない世界から見ればそれは一種の奇跡なのだ、と言えばそのことがわかっていただけるだろうか(ちなみに筆者が若い頃には「えんぴつが100円足らずで買える奇跡」ということで教えてもらった)。
おそろしく手間がかかっているプロダクトを、とてもリーズナブルに買える世界に身を置くことができれば、その個人や社会はそれだけ幸せになれる。「自由市場が人類の幸福に資する」とは、簡潔に言うならばこのような理由からである。
自由市場が存在するためには、さまざまな条件が必要だ。その中でも「所有権の確立」が最も根本的なものである。所有権の「絶対性」「抽象性」ともいわれるが、わかりやすく言えば「所有者がきちんと所有権を行使できること」つまり自由に売り買いできることこそが、自由市場を成立させ、そのパワフルな効用の恩恵を私たちは得ることができる。
少なくともミクロ経済学ではこのように教えられる。そして実際に、所有権の確立と自由市場は圧倒的に世界を変えてきた。
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