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ワクチンの特許は「独占しないほうがいい」理由 ノーベル経済学賞を受賞した最新分野の考え方

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ワイルとポズナーはこれを「独占問題」と呼んでいるが、私的所有が使用を排除してしまうことを解決するためにさまざまな先行研究と独自のアイデアを披露する。利用可能なリソースを退蔵させないため「私的所有」自体を制限する、つまり部分的、社会的な「共有」に移行させることが市場のマッチングを進化させるというのがその骨子である。

これはすでに公共分野で入札(オークション)によってリソースの賃借料設定等ですでに行われている仕組みだが、それをより汎用的なケースに(例えば私企業が保有する特許などに)応用することの可能性と方法論が語られている。

簡単に言えば、自分が持っている土地や知財を自分以上に活用できる人がいたら、その人に譲り渡さなければならない。

これはなかなかに強烈な仕組みで封建制時代にさかのぼったように感じられるかもしれないが、かの時代と違うのは、それは封建的な権力によるものではなく、「より有効に活用させられる」と主張する人物のビジョンと能力に由来するもの、ということだ。

ラディカル・マーケットが未来をつくる

一見してシェアリングエコノミーとの親和性は明らかだろう。シェアリングエコノミーは単なるリースによる経済というだけでなく、設計次第でさまざまな領域で問題解決に活用していくことができる、そのヒントを得たい人たちにとっては非常に多くの学びがあるだろう。

また、昨今で開発が待たれる特許を伴う製薬の分野でも、公共機関等を介するなどして、より自由で有効な利用や開発を行える環境を無理なく整えるようになるかもしれない。例えばワクチンが特許のかたまりでできているとして、社会全体でよりよく活用する枠組みを考える際も示唆深いだろう。

そして政策を策定、実行する官僚たちにとっては本書は非常に刺激的な内容だろうと思う。とくに経済官僚ならば必読の書だと断言したい。

ほかにも、例えばITを使った新しいマーケットプレイスを開発したいアントレプレナーにとっても一読しておいて損はないものだろう(ワイルはマイクロソフトの首席研究員でもある)。魅力的な事業が思いつくきっかけになるかもしれない。

このように、私たちの未来の生活を考えるのが楽しくなる、根源的なアイデアの詰まった“奇書”なのである。

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