「バブル経済の分析」は経済学の鬼門
いま研究者の間でひそかに注目されている経済学がある。
「不均衡動学」という。経済理論としては由緒正しくもマイナーな存在で、経済学者のなかでもごく限られた少数が知る「不均衡動学」は、30年の長い不遇の時を経て、12年前の金融危機、いわゆる「リーマンショック」時にそのメカニズムをすっきりと説明するものとして再評価されている。
この「不均衡動学」の枠組は、“コロナショック”に見舞われるいまの株式市場を見通すうえでも、大きなヒントを与えてくれるものだ。金融関係者、バブル経済の秘密を探りたい者、またいまの株式市場の動向に興味を持っている方は、知っておいて損はない。
記憶に新しい先だってのリーマンショック時、大規模なバブルの崩壊を目の当たりにした経済学者の多くは、その惨状を前に色を失っていた。
世界最大級の銀行や保険会社が巨額の資金をもって救済され、一部の投資銀行は破綻へと追い込まれた未曾有の金融危機は、経済の実体的なダメージへの憂慮とともに、学者自身の学術的な練度の自省を促すものであった。
洗練された金融工学による効率的なリスク管理、そして経済原則的に堅牢だと自負する「神の見えざる手」による市場の自由なプライシングは、時に多少のスランプはあるにしても、おおむね安定的に経済活動を駆動させる枠組であるはずだった。
しかし、現実はそれから大きく外れてしまう。甚大な金融ショックを目の当たりにし、「本来ありえない大逸脱が起きている」「何か不適切なものが混じり込んでいたのか」と、経済学者たちはいぶかりながら分析を続けるが、なかなか要領をえることができなかった。
例えば“経済学大国”である英国の経済学者たちは、このときエリザベス女王に「なぜ予見できなかったのか」と責められているが、芳しい返答ができなかったことでよく知られている。
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