ワクチンの特許は「独占しないほうがいい」理由 ノーベル経済学賞を受賞した最新分野の考え方
自由市場は時間とともに、大いなる効用と同時に「巨大資本家」を生み出していった。封建領主とはまた違った勢力である巨大資本による「独占」の問題は、市民革命以降、封建制支配に代わる大きな問題となっていった。
古典派が目指した自由市場は大きなパフォーマンスを上げたが、今度は資本家の独占を生んでしまう。
そこで出てきたのが、「中央計画(経済)」というアイデアだ。巨大資本家の独占・寡占による弊害が自由市場経済で避けられないならば、中央政府が賢く計画的に配分すればよい。このアイデアが共産主義につながっていく。
マルクス経済学の創始者、カール・マルクス自身はこの問題の解決のために中央計画を用いることにさほど肯定的でもなかったとも言われているが、後の共産主義指導者たちによって計画経済が行われる。
当初では悪くないパフォーマンスを示し、何より自由主義経済が恐慌に見舞われたときには、比較して安定的な経済成長を実現していた。
封建制から自由市場主義を経て、インテリが設計する計画経済へ。共産主義革命のパワーはやがて世界経済を席巻するかに見えた、そんな時代の到来である。
共産主義の末路を予見したハイエクと新古典派経済学
世界中が恐慌に見舞われるなかで、“賢い“計画経済によって乗り切ってきた共産主義経済だが、やがてそのパワーは徐々に低下していく。いかに賢い計画であったとしても、日々絶え間なく起き続ける変化に対応することを苦手としていた。
とくに従来の延長線上にはない「イノベーション」に関しては極端に不得手であることが露呈されるに至り、また自由市場主義であれば自由市場で迅速に調整される類のギャップが蓄積して物資の滞りや計画の先送りが頻発するなど、行き詰まりが見えてきてしまう。とくにフレデリック・ハイエクらの新古典派経済学はその帰結を論理的に見抜いていた。そして1990年頃には、ソ連やかつての東欧の共産主義的経済体制は崩壊してしまう。
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