映画のWeb宣伝担う「フラッグ」の素顔と挑戦 デジタルマーケを映画界に注入したパイオニア
パソコンで映像を編集できるようになったことから、企業PR動画などを作り始めたというのがそのはじまりだ。その流れで、BIGLOBEの映画情報サイト「シネマスクランブル」の立ち上げを手伝うこととなった。
「ハリウッドスターの来日イベントがあっても、テレビだとせいぜい1分くらいしか使われない。でもウェブなら尺(時間)は関係なく好きなだけ観られる。なおかつ有名人が映っているコンテンツなのに、プロモーションということでギャラも発生しない」(久保社長)
そこで久保社長は、映画の記者会見やインタビュー映像などの取材・撮影を引き受け、現在の動画配信サービスの先駆けともいうべき活動を始めた。なお、フラッグは2004年に株式会社化している。
そうした活動の中で、映画配給会社とのコネクションができた久保社長は、映画業界にはデジタルに特化した映画宣伝会社が少ないという現状を知る。そこで2008年ごろから映画宣伝を本格的に手がけることになる。しかし当時の映画宣伝といえば、雑誌、新聞などの紙媒体、もしくはテレビなどが中心だった。
草創期のウェブ宣伝を担う
「ウェブはわからないんで若い人でやってよ」「テレビや新聞に露出しなかったんで、ネットに出しておいてよ」と先輩宣伝マンから言われるような時代だ。
しかしフラッグが手がけるのは映画宣伝だけではない。企業PRなどの映像制作、コンテンツ制作、ウェブ制作など幅広い。クライアントも医療系、教育系、スポーツ系など多岐にわたっている。売り上げの割合は、映像制作が4割くらい。広告も含めたプロモーションの仕事が6割くらいだという。
フラッグは、映画業界外の取引先とのやり取りも多かったため、映画業界とはまた違った視点でプロモーションできることが強みとなった。逆に、エンタメ業界以外の企業のPRを頼まれるときも、映画PRなどのノウハウを生かした柔らかいプロモーションを求められるケースも多いという。
「メディアの方に取材をしてもらうには、『メリットを用意できます』と言わなくてはならない。そこがお互いにウィンウィンにならないと長い付き合いは続けていけない。デジタルになったとはいえ、媒体とのやり取りは前よりも増えているかなと思います」(久保社長)
以前の映画業界は良くも悪くもアバウトで、「ターゲットはオールターゲットです」「ヒットしたのは作品が良かったから。ヒットしなかったのは作品が良くなかったから」というような論調がまことしやかに広がっていたという。なぜヒットしたのか、という分析がなかったため、再現性もない。
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