「黒い吉野家」デザインが開拓した意外な新客層 外食チェーンの店舗デザインにこめられた狙い

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私がまだ駆け出しだった20代の頃に働いていた設計事務所が「吉野家」の設計に携わっていたこともあり、オレンジ色の看板には深いご縁を感じます。オレンジ色の看板を目にするたびに、ひと目で「吉野家」の存在がわかる秀逸な色彩だと思います。

「吉野家」にも、近年は見慣れたオレンジ色ではなくブラックをベースにした「黒い吉野家」が各地に登場しています。テレビやネットで話題になったこの「黒い吉野家」は、看板をオレンジから黒にしただけでなく、居心地を重視した空間デザインに刷新。「C&C(クッキング&コンフォート)」をコンセプトにしたモデル店舗として生まれました。

第1号の「黒い吉野家」が東京・恵比寿にできたのは、私が手掛ける以前の2017年。しかし、吉野家ホールディングスの社長と会長を歴任した〝ミスター牛丼〟こと安部修仁氏は、さらによりよくしたいと外部の設計士に依頼するよう相談されたそうです。

カフェのような雰囲気の吉野家

それを受けて、吉野家のアルバイトからトップに上りつめた現・吉野家ホールディングス代表取締役社長の河村泰貴氏が、「もっとスタッフが効率よく作業できるデザインに変えてほしい。もっと若いターゲットに訴求するデザインに変革してほしい」と、直々に私をご指名くださったのです。

別案件のデザインコンぺで私が吉野家の歴史を表現した映像をプレゼンしたところ、河村社長と役員の方々が大変感激され、「牛丼屋をよく知っている大西君に『黒い吉野家』のデザインをお願いしたい」と言われたのです。

「黒い吉野家」は、誰もが知っているシンボルカラーの「オレンジの吉野家」に対する一種のチャレンジングな実験的存在です。変えるなら、「えっ、これがあの吉野家!?」と誰もが仰天するようなデザインにしようと私は考えました。

「黒い吉野家」に私が取り入れたのは、インダストリアルデザインの要素です。壁や天井はオフホワイトを基調にし、黒いアイアン素材のアイテムをアクセントに使いました。木材のインテリアやグリーンのナチュラルなテイスト、優しいトーンのファブリックをあしらうことで、カフェのような雰囲気にデザインしました。

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