「黒い吉野家」デザインが開拓した意外な新客層

外食チェーンの店舗デザインにこめられた狙い

吉野家やマルクドナルドの看板が現在の色になった理由とは(撮影:今井康一)
人々の目を引く外食チェーンの店舗デザインはどのように決まるのか、実際にデザインを手がける大西良典氏の『コロナ危機を生き残る飲食店の秘密~チェーン店デザイン日本一の設計士が教える「ダサカッコイイ」の法則』より一部抜粋してお届けする。

吉野家の看板がオレンジ色になった理由

看板の色や店のイメージカラーは、その店の集客に直結します。「マクドナルド」の看板は、赤地に黄色い「M」マークです。しかし、アメリカではもともと黄色がメインカラーで、赤はメインカラーに使われていませんでした。

「日本マクドナルド」(現・日本マクドナルドホールディングス)の創業者・藤田田氏が、赤信号と黄信号を見て、日本で展開する店舗のイメージカラーを赤と黄に決めたそうです。人は赤信号や黄信号には本能的に注意を払うので、赤や黄色の看板には自然と視線を向ける心理効果を狙ったのです。

では、「吉野家」は、看板がなぜオレンジ色なのだと思いますか? これには有名な逸話があります。今から半世紀以上も前、当時の「吉野家」の社長であった松田瑞穂氏がアメリカに外食ビジネスの視察に訪れたときのことです。

「あのオレンジ色の屋根は何だろう?」

広大な土地を車で移動していた松田氏は、1㎞ほど前方に見える鮮やかなオレンジ色の屋根にとても目を引かれたのです。松田氏が見ていたのは、「ハワード・ジョンソン」というコーヒーショップの屋根でした。

「よし、これだ! 吉野家の看板もオレンジ色にしよう!」

松田氏は膝を叩き、その瞬間、吉野家の看板をオレンジ色にすることに決めたそうです。暖色系のオレンジ色には、食欲を刺激したり気持ちを明るくポジティブにする心理効果があります。たくさんの競合店が軒を連ねる繁華街では、遠くからでもぱっと目立ち、食欲を喚起し、ポジティブな印象を与える「吉野家」の看板はとても有利です。

明治時代に築地に牛丼の個人商店として誕生した「吉野家」が、関東大震災や東京大空襲の災禍をくぐり抜け、高度成長期の労働者の胃袋を満たし、巨大な牛丼チェーンとして躍進を遂げた大きなきっかけになったのは、このオレンジの看板だったのです。

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