オリンパス、脱・カメラで狙う「医療の列強」の座 医療機器の世界大手を目指し、M&Aでも攻勢

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治療機器事業では、海外の競合に負けじとM&Aに力を注ぐ。8月には大腸内視鏡の先端に取り付ける機器を開発するイギリスの医療機器メーカーを買収。12月には、肺がんなどの診断に使われるシステムを開発するアメリカの新興企業を買収した。竹内社長は「治療機器事業は成長の大きなもとになるので、今後の事業投資に占める割合は大きくなる」と意欲を見せる。

継続的なM&Aと新製品の販売拡大により、今後3年間、前2020年3月期に2160億円だった治療機器の売上高は、内視鏡事業を上回る年平均成長率8%を目指す。

後発企業には厳しい独特の市場

とはいえ、長期的に成長を継続するのは容易ではない。内視鏡以外の外科器具の領域では欧米企業がスタンダードを握る。医療機器の安全性は人の命に関わるため新しいプレーヤーの製品が市場に受け入れられるまで時間がかかる。後発企業が競争で生き残るためには、新しい価値を提供できる製品を開発しなければならない。

また足元では、新型コロナウイルスの影響で業績にブレーキがかかっている。感染拡大により診断、手術の延期が増え、5月の内視鏡事業の売上高は前年比2割減、治療機器事業も同3割減まで落ち込んだ。

オリンパスの2021年3月期の業績は、撤退する映像事業を除き、売上高6970億円(前年比8%減)、営業利益605億円(同34%減)と大幅な減益が見込まれる。営業利益率も2023年3月期に目指す20%には遠く及ばない8.7%どまりだ。

ただ、今期は内視鏡の自主回収費などが一時的に利益を押し下げた。竹内社長は「順調にいけば2023年3月期に営業利益率20%はいける」と自信をみせる。

オリンパスは、赤字の映像事業を切り離し医療機器への集中で世界大手に迫ることができるか。得意の内視鏡で手堅く更新需要を取り込みつつ、それ以外の製品群を拡充するM&Aの腕が試されている。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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