丸亀製麺に次ぐ稼ぎ頭をトリドールは探せるか 豚丼専門店とカフェはいずれも伸び悩む

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セグメント利益率(2020年3月期)で採算面を比較しても、コナズ珈琲は0.9%、豚屋とん一は0.8%。14.3%ある丸亀製麺の足元にも及ばない。メニュー構成に課題があり、利幅が小さかった。

業容拡大を目指し2017年に約11億円を投じて買収した立ち飲み居酒屋「晩杯屋」を運営するアクティブソースに至っては、業績低迷が続いており1億2000万円超の最終赤字(2020年3月期)となっている。

田中氏は「メニューの見直しも進んでおり、すでにコナズ珈琲は利益を生み出せる体質に変わっている。コロナ禍でも出店の余地はあり今後の成長が期待できる」と強調する。

一方で、豚屋とん一については「ビルイン型店舗などショッピングセンター以外で出店できるよう業態を再開発しなければならない」(田中氏)状況だ。

トリドールが中長期的な成長エンジンと位置づける海外展開についても課題が残る。アジアでは一定の成果が出ているものの、アメリカでは店舗数が伸び悩んでいる。だが、「世界6000店展開、世界の外食業界で売上高トップ10入り」を目標として掲げる以上、市場規模の大きいアメリカを取り逃すことはできない。

アメリカ展開は戦略を仕切り直し

トリドールの粟田社長は「今最も関心があるのはアメリカ。賃料や人件費の安い中南部を軸に、丸亀製麺を積極的に展開したい」と力を込める。2025年までに丸亀製麺を160店舗展開する構えだが、2020年11月末時点でアメリカに展開している丸亀製麺はわずか9店舗にすぎない。

234店ある丸亀製麺の海外店舗のうち、大半を占めるのはインドネシア73店舗、中国55店舗、台湾40店舗などのアジア諸国だ。トリドールとしてみても2020年3月期時点で海外事業売り上げの71.6%を占めていた地域は香港だった。

アメリカでの新規出店が伸び悩んでいた理由を、トリドールの海外事業本部の杉山孝史本部長は、「駐在員と本社が現地戦略を考えていたため、日本人の価値観から抜け出せなかった」と分析する。

これまではメニュー構成が現地ニーズを取り込めていなかった。出店地域も西海岸の都市部に限られており、顧客層を拡大できずにいた。

そこでメニューや店舗展開、内装などをすべて現地メンバーに任せることにした。試金石となるのが8月にテキサス州で出店した店舗だ。アメリカの家庭料理であるマカロニ・アンド・チーズを意識した「チーズうどん」など、現地ニーズを取り入れた独自メニューを投入した。杉山氏は「売り上げも順調に伸びており全米展開のモデル店舗としたい」と自信を見せる。

「大切に思っているのは丸亀製麺の世界展開」。粟田社長はあくまでも世界展開の旗を降ろさない。国内新業態の育成と海外市場攻略という二面作戦をうまく進められるのか。コロナ禍の中で、その積極策は際立つ。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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