週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #野口悠紀雄「経済最前線の先を見る」

80歳の私が政府のコロナ対策に強く切望する事 通常医療を保って救える命を守れるように

8分で読める
2/4 PAGES
3/4 PAGES

そこで、つぎのような考えが生まれます。

まず、高齢者や基礎疾患者は、隔離状態に置きます。

それら以外の人々については、社会経済活動の制限は、最小限にとどめます。

そして、ある程度の感染を許容します。

感染が拡大して医療崩壊に至った場合には、高齢者は見捨てます。これは、「トリアージ」(選別)と呼ばれる措置です。

スウェーデンでは、実際に、これに近い考えが採られました。

医療現場での個別的判断だけでなく、都市のロックダウンを行わないなど、社会全体としての政策にも、その考えが反映されました。これを「社会的トリアージ」と呼ぶことができるでしょう。

私は、こうした政策には断固反対です。 

医療崩壊の意味がわかった

沖縄やスウェーデンやトリアージのことを考えていたのは、春のことです。ところが、最近になって、日本でもすでに間接的な社会的トリアージが始まっていると考えるようになりました。

そう考えたきっかけは、私の近所の病院で、新型コロナウイルスのクラスターが発生したことです。

40人程度の感染者が発生したようです。一部のテレビでは報道されましたが、新聞に記事が現れません。地域版にも記事がでません。

外来には影響がなかったからということのようです。外来患者への通知もありませんでした。

つまり、この程度のことは、もはやニュースにもならない「当たり前」のことになってしまったのです。今年の春であれば、大ニュースだったでしょう。

ところで、この件があったため、この病院の外来診療は、当面休止になってしまいました。ここは地域の中心病院なので、多くの人が診療を受けられなくなりました。その大部分は高齢者です。

コロナによる医療逼迫とは、コロナ患者の病床が不足することだけでなく、通常医療ができなくなることでもあると、改めて認識しました。

コロナ感染を免れたとしても、そのほかの病で命を落とす確率が上昇しているわけです。

こうしたことによって死亡したとしても、コロナとの間に直接の関係があるとはみなされません。したがって、問題視されることもないでしょう。これは静かに進行する危機です。

いままでも、病院でクラスターが発生した場合には、こうしたことがあったのでしょう。しかし、身近な問題とは感じられませんでした。いま事態が変質しつつあると感じます。

次ページが続きます:
【GoToは若い健康な人と大企業に利益を与える】

4/4 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象